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私の体験怪談『アペタイザー』

作者: ナリア

初のホラーモノですが、体験した話なので頭を捻ることも無く書けました。

作中で独り言が多かったりしますが、私自身小説好きなので思ったことを口にするようにしているからです。


まあ、本当に独り言を言ってるだけなのですが……

始まりが何時だったのかはわからないけど、明確な異変が起き始めたのは夏の終わり頃の事だった。


日雇いの引越しのアルバイトをしていた時の事。


「顔色良くないけど大丈夫?」

「あー、最近気だるくて……」


時期も時期だし、夏バテみたいなものだと言って、その日の作業を続けていた。




ふと違和感を感じたのは、少し古いとあるアパートの引越しをしていた時だった。


ダンボールを部屋から運びだそうとして、足音が聞こえたので玄関で止まる。


「はい、貰います」


そう言ってもう1人のアルバイトの子にダンボールを渡して部屋に戻る。


「ナリアくん。資材持ってきて貰えるかな」

「はーい、りょーかいです」


ダンボールを詰んだ台車を押して、エレベーターで降りる。


ちん、と鳴り扉が開く。

思ったより早い到着に視線を上げれば、3階の表記。

他の住人の方かな? と外を覗き込むが、誰もいなかった。


「……間違って押したかな」


偶に肘とかで押してしまっていたりもするから、その時は気にしないで扉を閉めた。


次の異変は、すぐ後だった。



資材を台車に乗せて、上へ上がる。

ちん、と鳴り扉が開く。


台車を押して外へ出る。

ふと視線を上げれば、『3』の表記。


「また、間違えて押した? 疲れてるのかな……」


エレベーターに戻り、目的の階へ戻る。

その後も何故か、何度も3階で止まるエレベーターにイライラしながら仕事をこなして行く。


(エレベーター1台しかないのに壊れてるのか。しょっちゅう他の階で止まるし、地味に時間かかるな……)


そんなこんなでトラックに荷物を積み終わり、移動する中での話。


「なんか、ここのエレベーター壊れてませんでした?」

「そう?」


もう1人のアルバイトの子に、エレベーターの話をしてみた。

てっきり同意が返ってくるものだと思っていた私は、その返答に戸惑った。


「別に、なんの問題も無かったけど……」

「え、私の時しょっちゅう3階で止まってたんですけど……」

「えー、なんかいるんじゃない?」

「やめてくだいよ、そういうのー!」

「ナリアくんビビりだしねー」


移動中の笑い話。

その時は、まあそういうこともあるかって感じだった。

というのも、私の周りでは『変わったこと』が多かったりするからだ。


だけど、この時のコレは少し毛色が違かった。


引越し先のマンションのエレベーター。

それもまた、目的で無い階に止まったのだ。


勿論、誰も居ない。


「……勘弁してくれ」


夏の終わりとは言え、まだ暑い。

そんな中で、作業の妨げになる出来事。

当然、フラストレーションは高まる一方。


「巫山戯るな。こういうのマジでやめろ。今日はさっさと作業終わらせて帰りたいんだ」


思わず零れた文句。

台車を部屋に運び、再び下に降りる。


7階で止まった。

扉が開く。

人は居ない。


5階で止まった。

扉が開く。

人は居ない。


3階で止まった。

扉が開かない。

何か、居た。



日が出ているのに、何故か外は暗かった。

その中で、一際暗い影があった。


あ、マズイ。

これはダメなやつだ。


意味があるか分からないが、1階のボタンを連打する。

ホラーモノを見る時はバカにしていたが、本当にこういう事態になるとやってしまうものらしい。


扉が開く。

慌てて閉まるボタンを連打する。


外は、普通のマンションの3階だった。



「なんだよ、もう……」


それで終われば、ただの恐怖体験で終わりだったのだろう。





その後も異変は続いた。


引越しのお客さんが飼っている犬が、どうしてか私に向かって吠えるのだ。

お客さん曰く、普段は大人しいのだとか。


他の日、通りがかった人が抱いていた赤ちゃんが、私を見て泣き出した。


妹の近くを通ったら、耳鳴りがすると異常を訴えられた。




日を追う事に少しずつ異常が増え、倦怠感が酷くなっていく。

睡眠時間が減り、食も細くなり家族に心配される始末。



「なんか憑いてるんじゃない?」

「お祓いでも行ってきたら?」


妹と母にそんなことを言われた。

エレベーターの話はしていないが、連日ろくに寝れず1日1食食べるか否かの私を心配していたのだ。

食べ盛りだった私が1日スープ1杯で限界だったのだから、心配するのも無理はない。


とは言え、お祓いなんてどこでやればいいのかわからないし、それを調べる気力もない。


だから、その日は早めに寝て体調が戻るのを願った。






──部屋が軋む音で目を覚ます。


残暑でまだ暑いハズなのに、どうしてか寒くて震えが止まらない。


床が軋む。

誰かが歩いている様だった。


壁の絵がカタカタと揺れている。


不思議と、あまりそれは気にならなかった。


「か、ぁあっ」


おなかがすいた。

お腹の中が空っぽで、痛む。

酷い飢餓感に支配される。


気配を感じて目を開く。

なにかいた。


モヤのような、歪みのような何かが覆い被さっていた。


何でも良かった。

どうでもよかった。

限界だった。

おなかがすいた。


なにかが近づいてくる。

身体を掻き抱きながら、手を伸ばした。




──目を覚ます。


いつの間にか寝ていたようで、軽く伸びをする。

身体の調子がいい。今までの不調が嘘だったかのようだ。


奇妙な満足感があった。

満腹感、と言ってもいい。


リビングに降りれば、朝食を食べている妹がいた。



「おはよう」

「おはよう。どうだ、耳鳴りはするか?」

「いや、しないけど? なんで?」

「実は体調が良くなってな。絶好調ってヤツだ」

「おー、よかったねー」



おざなりな返事だったが、私は気分が良かった。

まるで、憑き物が落ちた様だった。


お腹が鳴る。

暫くロクに食事をしていなかったのだ。



「昨日の夕飯の残りもあるし、食べれば?」

「そうしよう。ところで、何か香水か何かをつけてるのか?」

「なんで? 別につけてないけど……」

「いや、いい匂いがしたんだけど、気のせいか?」


自分の分を用意し、ふと物足りなくてスープを作る。


「飲むか?」

「いるー」


2人分用意して席に着く。


「あ、そういえばさ──」


妹の話を聞きながら、ちらりと視線を向ける。


「──おいしそう」

「ん、なんか今耳鳴りがした」

「そうか? 悪いな、スープでも飲め。大事にな」


食事に向き直り、両手を合わせる。


「いただきます」


とてもおいしい食事だったが、欲を言えばもう1品食べたかった。

いやー、これが本当にあったから困ってるんですよねー。

夢オチならそれでヨシ、ってやつです。


この後どうなのかって?

まあ、こうして書けているのだから元気ではありますが……気になる人は感想でもくださいなー?

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