災いの世界
神託に預言された災いの世界から悪魔たちが侵攻してきた。
当初は悪魔に対して連敗を重ねて街がいくつか滅んだが、教会の神聖騎士団や各王国の騎士団などがこれと戦い、徐々に悪魔を押し返している。
これは神託で告げられた世界を救う存在、神具の力のおかげである。
とは言っても難民や治安を維持する兵士たちが出征したことで、世界の治安は悪化していた。
難民の中には財貨を失った者も多かったが、ほとんどの者は親類縁者を頼ったり、魔力を神殿に奉納した見返りとして食事を配給されたりしながらなんとかその日を暮らしていた。
「お兄さん、銅貨二枚でいいよ」
「きたねえな、病気持ちとやれるかよ。他をあたりな」
この世界の住人には大きさは違えど魔石がある。
魔石があれば魔力があり、教会に魔力を奉納することで食事が貰えた。
魔石があれば・・・
神聖騎士団を中心とした軍は順調に悪魔に奪われた土地を奪還していった。
その最前線にいるのは賢者と聖女、その二人を守る聖戦士たちだ。
賢者が神具を使い強力な攻撃魔法を放ち、聖戦士たちが残敵を掃討する。
そしてけがを負った者たちは、賢者から神具を受け取り聖女が癒やしの魔法で回復させる。
まさに不死身のごとき活躍である。
「明日には災いの世界と私たちの世界をつないでいる場所に到達できます。頑張りましょう」
「あれ、もしかして寝過ごした?もう災いの世界との戦いが始まってるじゃん。今更神託とか出してもあれよね・・・。まあもう勝利は間近みたいだし結果オーライよ。さすが異世界産の魂は格が違うわ」
女神ティリスは遠見の水鏡で地上を見下ろしながら満足げに笑みを漏らした。
「あ、もう終わるなら地球の神に連絡しとかないとね」