異世界
地上に降りるとそこは草原だった。
教会どころか人の気配すらなかった。
女神ティリス様から降りる場所は大雑把になる、とは聞いていたけどこれはない。
そう心の中で叫んでも答えは返ってこなかった。
問題が起きたら祈りなさい、そうすれば魔石に込められた力を通じて私に声が届きます、と言われたけど無反応だ。
それともこの程度は問題なしと判断されたのだろうか?
このままここに居てもどうにもなりそうになかったので、木の棒を立てて倒れた方向へ歩き出した。
すると運良くなのか、荷馬車に遭遇した。
なんか角の生えたイノシシっぽい動物に襲われてたけど・・・
私は女神様に習った通り、とりあえず結界を張ってから攻撃魔法を放った。
すると何匹かが私の方へと突進してきたが、結界にぶつかって弾き飛ばされた。
私には近づけないと言う事が身をもってわかり安心してた。
まあ私を連れてきた神様が去り際に与えてくれたご加護は女神ティリス様曰く、殺されても生き返れるくらいのご加護だそうだけど。
私は鉄壁の守りの中から、ひたすら攻撃魔法を連打した。
最初は当たらなかったけど、同時に数発撃ち出し力業で撃退した。
「優秀な魔法使いだな。街に行きたいなら乗せてやろう」
助けた男性たちに荷馬車に乗せて貰えることになった。
街へはここから二日かかるらしい。
大雑把にも程があるでしょう、と女神様に心の中で文句を言っておいた。
当然答えは返ってこなかったけどね。
「今日はここで野宿になる。見張りは俺たちが交代でやる。あんたはもう寝な」
夕食の後、リーターっぽい男性が荷馬車を指さしながらそう言った。
今日は初めてのことばかりで、私を連れてきた神様が与えてくれた加護のおかげか体力的には大丈夫だったけれど、精神的には少し疲れてしまったので素直にその言葉にお礼を言って荷馬車に向かった。
外で寝るなんて中学のキャンプ以来だ。
荷馬車の床は堅いし毛布はゴワゴワの布だけだけど、この世界ではこれが普通なのだろう。
私は静かに目を閉じた。
「あの女はもう寝たか?」
「静かだから寝たと思うがもう少し様子を見るか」