始まり
”澄んだ水色の魂よ、其方の死は確定している。だがその前に異世界を救ってみないか?”
そう説明されて私は頷いた。
私は交通事故に巻き込まれて、そして十七歳で命を終える。
愛されて育ち、将来は立派な人になると両親に誓っていた。
だけど私はまだ何も成していない。
異世界を救う。
死ぬ前に何かを成し遂げて、両親との約束を果たしたかった。
当然異世界での出来事が、両親に伝わることはない。
だからこれはただの自己満足、でも、それでも・・・
異世界で最初に会ったのは異世界の女神ティリス様だった。
ちょっとあれで頼りない感じだけど、本人がそう名乗ったのでそうなのだろう。
私に最初に声を掛けてくれた人は名乗りはしなかったけど、感じる雰囲気からおそらく八百万の神の誰かなのだと思う。
えらい違いだと思った。
「では澄んだ水色の魂よ。事が終わる三年後にまた迎えに来る。黄色と桃色の神よ、我からも加護を与えるので大丈夫だとは思うが、この魂はあくまで貸し出した者である事を忘れぬように」
私を連れてきた神はそう言いながら手を私の方に向けると忽然と消えてしまった。
きっと地球に帰ったのだと思う。
それから女神ティリス様に簡単な魔法の使い方を教わった。
今のこの体は女神ティリス様の力を込めた魔石が埋め込まれており、強大な魔力を有しているそうだ。
体の中に石があるなんてちょっと怖いと思ったけど、この世界の住人は大きさに違いがあっても皆持っている物である、と説明されて少し安心した。
「なんでわざわざ異世界の私を呼んだんですか?」
ふと疑問に思ったことを質問した。
別に私でなくても地球の魂なら誰でも良かったらしい。
地球はこの世界と比べてかなり高位の次元に存在するらしく、女神の力を分け与えるためにはこの世界の魂では耐えられず、高位の次元の魂が必要だったそうだ。
誰でもいいと言われて少し落ち込んだが、私を連れてきた神様は私を選んでくれたのだからそれで良いと納得しておいた。
そして自衛のための攻撃と防御の魔法を習得した私は地上に降りることになった。
「神託は出してあるから、どの街でもいいから教会に向かいなさい」
割と大雑把な説明で地上に降ろされた。
「さて、災いの世界が近づくのは二年後だからそれまでは地上の教会に任せておきましょう。それまで力を蓄えるために寝よっ」