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第7話  姉妹のある日

よろしくお願いします。


今回は妹の瑠璃視点です





お兄さんはお姉さんとなったあの日から積極的に女の子になろうとした。元から女ぽかった仕草はさらに女性らしくなって、口調もとりあえず家族でいるときは女性のそれにした。ファッションも歌も、果てには化粧まで始めた。確かにあの日からお姉さんの顔から迷いとかそういうのは消えたけど、ここまで急になるのもちょっと不思議だったから、理由を聞いてみるとなんでかはわからないけど、なぜかめっちゃ興味が沸くのだと言った・・・・・・。


それを聞いて少し心配になり、翌日にお姉さんがTSでかかりつけの病院へ連れていくことにした。と言うのもお姉さんがまだお兄さんの時はとてもとてめんどくさがり屋で、基本自分が好きなアクセサリー系とお菓子以外のものについて積極的な行動を起こすことがなく、趣味がほぼその二つしかないと言ってよかった。だから、化粧とかファッションに歌などにいきなり興味が出たから、人格や性格になんか影響が出たのではないかと、心配で病院に連れったけど、先生が言うにはTSしたことによって多少趣向が変わるらしい。性格も多少変わったりするみたいだけど、人格は変わらないから大丈夫だと言われてた。その後はせっかく来たことだからとカウンセリングと簡単な検査をして帰された。


完全に納得はできないけど、病院が大丈夫だと言うのならこれ以上心配したって私たちもお姉さんも疲れるのでもうしないことにしよう。


病院から出たところでお姉さんが行ってみたいお店があって、しかも一緒に来てほしいと言われたので、一緒についていくことにした。


病院からバスを乗り継ぐこと30分。そして、バス停から歩くこと10分。やってきたのは山の中腹に立つ庭のある小さなしゃれたお店だった。

「ここ?」


「うん。そうだよ。」


「結構前に一回ここへ来たんだけど、その時は女性のお客さんしかいなくて、とても居心地が悪かった。今はとりあえず女性だし、気にせず入れる・・・はず。」


「そこはまだ男の感覚だったんだ。あ、付いてきてほしい理由って・・・・」


「察しの通り。一人じゃ、気が重いから瑠璃についてきてもらったの。」


私はついでと言うことか・・・・まぁ、姉妹デートだとでも思って楽しむことにしよう。


庭には正面入り口からお店の玄関まで不規則に埋められた石の一本道があって、右側には小さな噴水と池があって、左側は何も置かれてないけど、市内を見渡せるように整備されていた。・・・・なかなかのいい場所だと思う。でも、なんのお店かいまいちよくわからない。


看板には〈魔法の家〉って書いてあったから、魔法でなにかするお店だろうけど。でも、具体的になにをするかはわからないし、お姉さんに聞いても、入ってからのお楽しみとしか言わない。イジワル。


そんなやり取りもしながら店の方に歩いていたら、丁度中から二人の女の子が会話しながら出てきた。


「美味しかったね!お姉ちゃん!」


「うん、本当に美味しかったよ!どこでこのお店の事を知ったの? 」


「えーとね、トゥイッターでこの店についてのトゥイトーがあってね、それで美味しそうって思ったの。」


「へーそうなの。」


「うん!・・それで明日は・・・・・・・・・」

そんな会話をしながら二人姉妹のお客さんが去っていった。


どうやら何かの食事ができるお店のようだ。なんかお姉さんが教えてくれないことに対してすこしだけ、気が晴れた気がする・・かも。


そのまま進もうとした瑠璃だったが、前に立っている凛がなかなか動かないから声をかけたものの、返事が返ってこないので、前に回ってみると、なぜか真っ青な顔ををしていた。


「お、お姉さん!?」


「え!?あ、ごめん。なんでもない」


「どうしたの?そんな、真っ青な顔をして。もしかして、体調が悪くなったの!?」


「いや、そうじゃなくてね・・・・。」


「じゃ、なに?」


「さっきの二人組がね・・・・」


「あ、もしかしてクラスメイト?」

見た感じだと私たちとほぼ同じだったから、そういうことか。でも、なんでこんな真っ青な顔をする必要があるのかな?あっ、そうだ。お姉さんがTSしたのを知っているのは今のところ学校と家族と病院の人だけだから、ここでクラスメイトとばったり会って、ばれたらどうしようって思ったのかな。


「・・・ばれなくて、よかったね。」


「うん。本当に。心臓止まるかと思った。」


今のお姉さんは誰がどう見ても正真正銘の女性に見えるだろうけど、元の顔ともだいぶ似てるし、男装すればたぶん男の時とパッと見変わらないくらいにできると思う。胸以外は。胸!以外!は!


はぁー。なんで生粋な女の子である私の方より、TSしたお姉さんの方が大きいのだろう。


ちなみに瑠璃は別に小さいわけではなく、むしろ平均より少し大きいのだ。凛が大きすぎなだけ。


「とりあえず、中に入ろう?外暑いし。」


「そうだね。」


そのまま凛と瑠璃はお店の中に入ろうとドアに手を掛け、引いた。開いた途端中から冷たい風が全身にあたり、二人は思わず体を震わせた。


「クーラの設定温度低すぎない?これ。」


「冷蔵庫に入ったみたいだよぉ、これ。」


寒い寒いと思いながら店の中に入ってたら、店員の女性が二人を角際のテーブル席に案内した。室内は七つのカウンター席と、五つのテーブル席があって、それぞれ間隔は広く、さらに市内を展望できる大きなガラス張りの窓も壁一面にあってとても開放的だなーと思う姉妹である。


席に案内されてから店員の女性がメニューを二人に手渡した。メニューはとてもシンプルなもので、虹、稲妻、銀河、彗星、流星、月光、光とそれぞれの値段のみが書かれていた。どんな食べ物なのか見当もつかない。



これ、どう選べばいいの?お姉さんは食べたことあるって言ってたし、さっきの二人も美味しいって言ってたから、とりあえず気になった銀河ってのを頼んでみよう。


「お姉さんは決まった?」


「うん。瑠璃は」


「私は決まったよ。」


「どんなものかは聞かないんだね。」


「聞いてもどうせ教えてくれないんでしょう?」


「そうだけど?」


「はぁー。」


以前の私もこんな感じにお姉さんをからかったりしてたけど、やられた側は結構つかれるのね。でも、お兄さんの時はしなかった、ていうかこんなめんどくさいやり取りなんて絶対にやりたがらないから、これもTSの所為かな?まぁ、いいや。先生は問題ないって言ってたし。


「瑠璃?」


「ん?あ、なんでもない。ちょっと考えことしてた」


「そう。・・じゃ、店員さん呼んでもいい」


「うん、いいよ。」


それから凛が店員を呼んで、それぞれ注文をした。ちなみに凛が注文したのは虹である。


「銀河と虹、それぞれ一つでよろしいですか?」


「はい。」


「わかりました。」


そう言って、店員が下がっていき、凛と瑠璃はしばらく当たり障りのない会話をした。






「お待たせいたしました。銀河と虹です。」

運ばれてきたのは二つのかき氷であった。ただ、その色は一般的なかき氷とはかけ離れていた。一つはまるで本当に虹を閉じ込めたようなもので、しかも普通にある七色のシロップをかけたものとは違い、こっちはその七色がかき氷の中でゆっくりと動いているのだ。もう一つは星々や銀河がまるで本当の夜空のように輝きを放っているかき氷だった。・・なにを言ってるか分からない?大丈夫、私も何なのかわからない。


「それでは、ごゆっくり。」


・・・・・・・・カシャ。


ずっとかき氷に釘付けだった視線はスマホの音によって凛の方に変わって、当の凛は写真を撮り終えてそのままスマホをテーブルに置き、スプーンを手にとって、これからかき氷を食べようとしたところで妹の視線に気が付いた。


「どうしたの?たべないの?」


「いや、・・これなに?」


「かき氷だよ。」


「いや、それはわかるけど、なんでそれ動いてるの?」


「んーとね、とりあえず食べてから、教えるね。」


そう言って、凛はかき氷にスプーンをさして、口に運んだ。


「ん~~。美味しい~。」


ごくり。


そんなに美味しいのか。どうせ、食べ終わるまで教えてくれそうにないし、私も溶ける前に食べよう。


そう考えた瑠璃もスプーンを手に取り、まるでプラネタリウムのようなかき氷にさして、口に運んだ。


・・!!!!


なにこれ!?


「美味い。」


食べたところから先ほどはまた違う星が映し出されてした。不思議に思いながらもあまりの美味しさに瑠璃は一心不乱にかき氷を食べ続け、気が付いたらすでに食べ終わっていた。


「・・・・・ほぉ・・。」


いまだにかき氷の美味しさが忘れない瑠璃に対して、凛はふふっと笑って、ネタ晴らしをした。


なんでも、このかき氷は投影魔術を応用したもので、投影したい映像若しくは静止画を粉に封じ込めてから、専用のかき氷機氷とその粉を投入して作れば、このかき氷が出来上がるらしい。立体なものだと、食べ進めばその部分に応じた違う映像になるという。美味しいのは、このお店秘伝の方法があるらしい。


「へー、そうなんだ。魔術をこんなところに応用できるのね。びっくりだわ。」


「そうでしょう~。私も最初雑誌で見たとき、びっくりしたの。」


「ほぇ~。」



たまたまこの日だけ人数が少なく、凛たちより後に入ってきたお客さんもいなかったから二人は店内で世間話をして、時間を潰した。



気づけばもう入店してからに時間が過ぎたので、二人は会計を済ませて店を出た。


「熱い。」


暑いじゃない。熱い。時間はちょうど午後の二時半で、一番暑い時間帯な上、二人は冷房をガンガン効かせた室内から出てきたから、暑いところか熱いと感じるのは必然だろう。


「早く家に帰ろぉ~お姉さん。」


「そうだね。この暑さは熱中症になるかも。」




それから二人は寄り道せずに帰宅して、順番にシャワーしてから、リビングでテレビを見ながら寛いでいた時に瑠璃から凛に話しかけた。



「お姉さん。」


「なに?」


「今度またあそこいこ?」


「うん。また二人で行こう。」







読んで頂きありがとうございました。

満足していただけたら幸いです。


次話は明後日に投下します。


すみませんm(_ _)m。5/3に投稿します。

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