第10話 でーと? (上)
そろそろ・・・・次のステージ(๑•̀ㅂ•́)و✧
それでは今回もよろしくお願いします
「・・・どう思う?」
「前途多難だなーって。思う」
「「・・・はぁ~~~」」
視点と時間が変わって
~~十分前~~
樹にTSしたと伝えてから六日が過ぎ、明日からはまた連日で道場通いになるから、今日は樹の最後の休息日になる。休息の初日は彼にうちへ来てもらい、前回出来なかった菓子作りを一緒にした。二日目は先約の理恵と徹と映画に行ったので、私は家で準備をした。
三日目。つまり今日は樹と隣県のモールに行くことになった。地元の駅からは電車で約五十分もかかるが、この地方では随一の大きさを誇り、何から何まである。それに今日は色々回った後にボウリングと映画も見る予定だから、かなり人目につくだろうけど、遠いから同級生とエンカウントすることもないだろう。
それにしても・・・・・
「遅い」
十時に駅前花壇で待ち合わせだけど、もう十時半になる。いくらなんでも遅すぎるから、電話したが繋がらない。帰ろうかな
・・・・・あ、来た。
本当にもう帰ろうかなと思った時に樹が自転車に乗って現れた。かなりのスピードで駐輪場に突入ー心配になるくらいの速さーしたと思ったら、すぐに出てきては走ってきた。
あんなスピードで自転車漕いでたら、電話には出れないかも。
「ごめん!凛。遅れてすまない」
「・・・・・なんで遅れたの?」
電話に出れなかったのは、出れないくらい急いだということで、許そう。だけど、遅れるって一言くらいメールしてくれてもいいのに。
「えーとね、それは・・・・・」
「まさかとは思うけど、忘れたとかじゃぁないよね?」
もしそうだとしたら、今この場でさよならしてあげる。
「いや、忘れたんじゃない」
「じゃ、なによ?」
「えーと、・・・実は・・・そのぉ、寝坊・・・・」
あ゛?
「あ゛?」
「えっっ!?いや、えーと」
「・・はぁ、もういいよ。早くいこ」
「うっ。本当にごめん」
「いいからっ、行こ?」
樹が動かないので、凛が強引に手を取って、二人は駅構内に入った。券売機で切符を購入したのちにホームへと進んでベンチに座り、そこで電車を待った。
それにしても、樹が寝坊だなんて珍しいね。何があったんだろう?・・・・こういうのは本人に聞くのが一番ね。
「そういえばさ、なんで寝坊したの?あ、もう怒ってないから。原因が聞きたいだけなの」
「うーんとね・・・いや。うーん。」
「本っ当に怒らないから。ね?」
「・・・・・緊張して、眠れなかった」
「????」
緊張?なにがどういう理由で?・・・私と一緒に外出するのが緊張するってことかな?・・・・いや、それはないでしょう。中学の時に二人で一泊二日のプチ旅行したことあるから、数時間の外出なんて緊張する要素がどこにあるのかな?
「あ、・・・・そう」
考えてもわからないなぁ。
~??視点~
「ねぇ、どう思う?」
「多分凛さんはなんで緊張してるかわかってないと思う」
「・・・だよねぇー」
凛と樹が座っているベンチから数メートルも離れてない自販機で、二つの人影があった。夏だというのに長袖長ズボンの格好をしていて、こそこそと喋りその様はやや不気味なものだった。そして、ある利用客がその不気味さを不審に思い、駅員を呼びに行ったのだが、この二人はまだ知らない。
『緊張する要素なんて、一つもないと思うけど?・・・・・え?なんでため息するの?せっかく久しぶりに二人で遊びに行くのだから、元気出してっ』
「・・・どう思う?」
「前途多難だなーって。思う」
「「・・・はぁ~~~」」
「あ、電車来たよ」
「うん、気づかないように」
「わかってるって」
・・・・・・・
「・・・・・あのぉ~。すみません」
~凛視点~
『うわぁっ!!』
「ん?・・樹。なんか聞こえなかった?」
「え?いや、なにも」
気の所為かな?一瞬瑠璃の叫び声が聞こえた気がするけど・・・・でも、今日は友だちと遊びに行くって話だし、いるわけないか。
ドアガシマリマス
「どしたんだ?座らないのか?凛」
「いや、座る」
多分声の似てる誰かだろう。
声の事は無視して、凛は樹の隣に座った。車内はそこそこ空いてて、ちょっと広くスペースを取って座ってもいいのに、凛は樹にくっつけるように座った。
「り、凛?」
「なぁに?」
今の凛、というか元から凛はかわいい系の女性の顔つきで身長も樹より十センチほど小さく、体格も劣っていた。TSしたことにより少しだけ身長が縮み、体格も小さくなっている。そして、顔つきがより女性的になって、さらに今日は化粧もしている。その凛が顔一つ分の距離でやや上目遣いな感じで樹の顔を見ていて、さらになかなか反応しないので、凛に小首ちょこんポーズが追加されたのである。
多分樹のHPはゼロになった瞬間だろう。まだ、目的地にはついてもいないのにだ。
「樹?」
「・・・ん?あ、なんでもない」
「そう・・・ねぇ、この前も昨日も家に来た時に何回かフリーズしたけど、どうしたの?」
「あ、いや。なんでもないぞ。うん、なんでもない」
「本当に?」
「本当本当。それよりさ、今日見る映画見るんだろ?凛って映画とか好きなのか?」
「ん~とね、時間つぶしの手段の一つで、家で映画見てるんだ。でも、一回も映画館で見たことがないからさ、一回行ってみようかなーって。ボウリングも今日初めてやるよっ!」
樹の質問に答える凛はとても元気であった。趣味っていうほどではないが、菓子作りとアクセサリー集め以外の時は部屋で映画をよく見るので、ライトなオタクくらいは名乗れる。かもしれない。最近はアニメも見るようになり、おそらくそのうち沼にはまっていくことだろう。
閑話休題
映画は少し好きな程度ではあるが、初めて映画館で映画見ることになるので凛はワクワクしていた。もちろんボウリングもそうだ。そんな無邪気に笑う凛を間近で見る樹のHPはどんどん削られていく。
「・・・心臓持たない。」
そんな樹の内心を知る由もない凛は始終やや高いテンションで話し続けた。そして、そんな二人の初々しいカップルのような振る舞いに、対面にいたご年配の夫婦がずっと温かい目で見ていたのである
HPを削られながらも、なに事もないようにふるまうこと五十分。遂にモールのある最寄り駅まで着き、二人は降りた。ちなみ老夫婦はまだ先なのか降りてなかったが、二人を見て微笑んでいた。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
「結構買うねぇ、凛」
「そう?瑠璃やお母さんと比べれば全然だと思うけど」
二人はモールに入った後は樹が凛の荷物持ちをして、買い物付き合う形でテナントを回っていたが、樹はその量にやや驚いていたのだ。
「ほとんど服だけど、こんなに必要か?」
「うーん。うちの学校ってさ、完全私服でしょ?」
凛たちの通う高校完全私服の高校だった。正確に言うと学校の制服はあって、それで登校しても全然OK。ただ、制服と言っても男子は市販のスーツに学校の校章を胸の部分に縫い付けるだけで、女子も好みのセーラ服に男子と同じようにするだけだし、下も常識内の丈のプリーツならどれでもいいことになっているし、女子はスカートではなくいパンツルックでもOKになっている。私服の場合は生徒手帳を必ず持参しなければならない以外は特になかった。
どうでもいいことだが校則的に男子でもスカートとセーラはOKなので、女装して登校する猛者や海兵のコスして登校す人もいる。そして、凛は男の時に幾度かクラスの女子達に女装させられたのは言うまでもない。
閑話休題
そして、凛は夏休み前までは男子だったわけだから、女物は地元で買った数着のみである。女子用のセーラー服とプリーツはまだ買っていないので、今日はそれもかねてモールに訪れていたのだ。ちなみに今の凛はネイビー色ノースリブトップスと八分のブラウン色トレンチスカートのコーデをしている。バッグもどこぞの高級ブランドのネイビー色台形型ミニバッグを使用している。
「あー、だからこんなに買ったのか」
「そーそー。今あるのは上が三着で、下はスカートが二着、パンツが二着だから、この状態で学校始まったら、すぐに着るものがなくなっちゃうよ」
「でも、別にお前男の時と身長はたいして変わらないだろう?その時のやつでもいいじゃないか?」
「だーめ。私は女の子を楽しみたいのっ!」
「・・・・じゃさ」
「うん?」
「・・・いや、なんでもない」
「そう・・・・私はもう買いたいものは買ったけど、樹は?」
「俺はいいよ。それより昼だ、昼!」
普通の女性ほどではないが、それでも二人はすでに一時間近くもショッピングを続けていたので、時計はそろそろ午後の一時になっていた。
そのとき、横を歩く凛からかわいい音が聞こえてきた。
「・・・・・昼飯なにする?凛が食べたいモノでいい」
「・・・・パスタぁ」
「・・・・・・・確か三階にイタリアンレストランがあったと思うから、行こう?」
「うん」
(๑•̀ㅂ•́)و✧
読んでいただきありがとうございました
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