第9話 一緒に
深夜テンションで仕上げてしまった話です。
よろしくお願いします。
その後も樹と話してみるとどうやら頭では私のことを凛だと認めてくれてるけど、感情的に複雑な気持ちらしい。その複雑な気持ちってなーに?って聞いてもなんか答えてくれないので、とりあえず一緒にいる時間を増やそうということで落ち着いた。
一緒にいる時間を増やすって言っても、ただ一緒にいるだけではない。男の時に樹とやったことを、今の私がやればいい。それに頭ではもう私が凛であるっていうのは知っているのであれば、一緒に居ればいるほど否定したくなる感情も減るだろう。
私の見解をそのまま樹に伝え、樹も同意してくれた。
「だけどよ、なにするんだ?」
「うーん。あんまり考えてないな。」
記憶に深いものは樹に誘われて二人でプチ旅行を一回したけど、旅行になると準備があるからすぐにはできない。できればすぐにできることがいい。
それからは二十分くらいこれはできない。あれは金がかかるとかで何をするか全然決まらなかった。
う~ん。一緒に出来て、さらにすぐできるもの・・・・あ、そうだ!
「食べ物作ろう!一緒に作って、二人で食べたりしてたでしょ?」
そう言うとなぜか瑠璃がこっちを見て、えっ!?って顔をしたけど、なんでだろう?私はただ菓子や料理を作ったら、樹に味見をさせて、感想を聞かせれもらったり、めんどくさい作業があれば手伝ってもらったりしてただけだけど、何も驚くところはないよね?・・・・
「あ~。そういえばそんなことやってたな。」
「材料は家にあるし、今すぐできることだから、そうしよう。」
「わかった。」
じゃー、決まったことだし、さっそく始めようかな。と思ったところで瑠璃が友達中学時代の友人からメールがきて、今から会えないか?とのこと。
瑠璃は県外の学校に行ったが、殆どの同級生はそのまま地元の高校に通っているから、久しぶりに会いたいのだろう。瑠璃は元気な性格で、自分からは敵も全く作らないから、友達もいっぱいいる。せっかく戻ってきたのに私の所為で友達に会えないのは瑠璃にもその友達にも申し訳ないので、そっちの方を優先させた。
急な用事ではなかったみたいだが、なんかいそいそと準備を終わらせて出てった。あんな嬉しそうな顔して・・・・・まさか彼氏か?だとしたら行かせたのは正解だな。恨まれたくないもん。
「私たちも始めるか。」
「おう。・・ところで、何作るんだ?」
「材料見てから決めるよ」
基本、趣味で作っているけど、一回一回外出するのはめんどくさいから、保存のきくパウダーや小麦粉などは大量にストックしている。揚げ物やつなぎに使うパン粉とかもいっぱいあるし・・・・
ぐぅーーー
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
うん、無視してくれてありがとう。
そういえば、今日もお母さんが朝早く仕事に行ったので、朝ご飯は私が味噌汁作って、それとご飯と漬物で簡単に済ましたから、ちょっと物足りなかったかも。それにもう昼食くらいの時間だし、不本意だけど、菓子じゃなく普通の食事を作ろう。
「・・昼食を作ろう」
「そうだな。俺もまだ昼食べてないし。」
「うん。・・・樹は何が食べたいのある?」
「うーん。ハンバーグかな?」
「ハンバーグね。」
「うん。凛が作ったやつはうちの母ちゃんのより旨いからな。」
昨日の夜もハンバーグだったけど、そんなこと言われたら、作りたくなっちゃうな。ひき肉と卵もまだ残ってるし。でも、自分のお母さんより旨いって言うのは・・・・
「・・・・お母さんにはそんなこと言っちゃだめだよ?」
「言わねーよ。」
言ったとしたら、樹のお母さんは絶対に拗ねるだろうなぁ。うちのお母さんより一つ上なのに、未だ二十代後半って言っても通じるくらい若々しいし、性格も瑠璃がそのまま大人になりましたって感じな、元気な四十・・げふんげふん
「じゃー、ハンバーグの材料と、あとゆで卵を二つね。。それと、ハンバーグじゃなく、ちょっとちがうものでもいいかな?」
二食連続のハンバーグさすがにきついから、ちょっと違うものにしよう。
「こっちは食べさせてもらう身だし、それに凛なら、何作っても旨いからいいよ。」
「えへへ、ありがとう。」
褒めてもなにも出ないよぉ~。
「・・・材料とって来る。」
あれ?・・・なんで無反応なんだ?
ちょっとボーとしてたら、樹が材料をとってきたので、樹にやってもらうことを伝えといた。食パンの白い部分を細かくちぎってから、水に浸したあとに絞るのと、卵をゆでてもらう。私は玉ねぎをみじん切りして・・・・目が痛いよぉ~。それから、ガラスボウルにひき肉と玉ねぎ、生卵と水分を絞ったパンの白い部分とその他調味料をいれて、練り込む。
手はちゃんと洗ったからね?
「あ、オーブン予熱しといて。二〇〇℃で。」
「フライパンは使わないのか?」
「うん。今回は使わないよ。」
さて、予熱が終わるまでに終わらせますか。
よく練り込んだら、クッキングシートの上に具材を平たく伸ばして剥いたゆで卵二つを包み込むようにして巻く。巻いたら、シートごと天板に乗せてから、丸めた具材上に牛脂を撒く。
あとは予熱の終わったオーブンにぽい、じゃなく、入れてから、二十分。さらにアルミホイル
かぶせて、二十分で出来上がりだ。
「めっちゃいい匂いがするな。」
「でしょ?」
待っている間はこの前の合宿はどうだったとか、ここ数日がどうのこうのとか話してたが、そろそろ出来上がるころには匂いがリビングの方迄来た。結構香ばしいから、樹は涎を垂らしそうな顔になった。こういう反応や会話を以前のようにしてくれる彼はを見ると、すこし心がじんわりと暖かい。でも、会話の途中で思い出したかのように黙ったりするから、すこし寂しい気持ちになっちゃうけど、こればかりは時間をかけてゆっくりやっていかなければならないよね。
チーン
加熱が終わったので、出来あがった料理を取りに行く。オーブン開けたら熱とともに香ばしい匂いがブワッと広がり、自分で言うのもなんだけど、かなりの上出来だ。もっとも、こねてオーブンにぽいするだけの簡単作業ですが。
やけどに気をつけながら、料理を取り出してから天板置きの上にのせて、ちょうどいい大きさに切り分けてお皿に盛りつける。あとはパセリやプチトマトを添えて、ご飯と味噌汁をお茶碗に盛り付けて、トレーに乗せれば、定食の出来上がり。
「はーい。どうぞ。フーカデンビーフ定食だよ。」
「フーカデンビーフって言うんだね。これ」
「そうだよ。どうぞ召し上がれ♪」
「・・・・・・」
あれ?
「樹?」
「・・うん?あぁ。・・いただきます。」
「・・・頂きます。」
食事前にまた固まったので、うら寂しいと感じたが食事の間樹はフーカデンビーフ食べるたびに旨い旨いと言うので、頬が思わず緩んでしまう。男の時もこういうことやったりしてたけど、なぜかあの頃と比べて褒めてもらうとよりうれしいって気持ちが沸きあがってくる。ちょっぴりに幸せな気分。
「ふー。うまかった。ご馳走さま。」
「お粗末様です♪」
笑顔で感謝されたし、料理もほめてくれたから、かなりうれしかったので笑って返した。
二人分の食器を取り、シンクで洗う。フライパンを使わないので、鍋の洗い物が出なくて心理的に少しゆとりを感じる。それに二人分の食器しか使ってないし、調理に使った道具などはオーブンに料理ぽいした後に先に洗っといたからすぐに洗い終わった。
リビングに戻ると椅子に座ったまま放心状態の樹を見つけた。
え? いやいや、なんで!?
「いっ、樹!?」
「えっ!? あ、ごめんごめん。考えことしてて。」
「あ、そうなんだ。てっきり体調が悪いのかとばかり・・・・」
「まさか。ほら、この通り元気だぞ!」
そういうと樹が立ち上がって、よくある自分は元気でーすポーズをとったのでちょっと笑った。
「・・・・・・・・・」
「樹?」
「・・あ、いや。・・・・・そうだ、・・えーと、確かに一緒に居れば、気持ちの整理がつくかもしれない。」
「本当!?」
「う、うん」
よかったぁ。親友がいつまでもぎこちなく接して来ては堪ったもんじゃないからな~。
うれしかったので、多分この時の私は満面の笑みな筈。
「・・・・俺、帰るわ。」
「え?・・・もう少し居よう?・・・まだ時間はあるし、おしゃべりしよう?・・・・・・それとも外せない用事があったり?」
「あ、うん、そ、そう。そういえばお母さんができるだけ早く帰ってきてねって言ってた。さっき、思い出した。」
「そうなんだ。なら、仕方がないね。」
樹のお母さんは本当に拗ねちゃうからね。それだと、樹にも迷惑かかるから今日はお開きにしよう。
「ありがと。だから、今日はもう帰るよ。」
「うん。わかった。気をつけてね?」
「おう。」
あ、でも次の約束をいました方がいいんじゃないかな?そう思ったので、樹に次は何時会えるのと
聞けば、明日から四日間くらいは道場で午前午後の稽古漬けなので、そのあとは三日間休息を取るらしい。
「なら、その間でどこかに行かない?」
「あー。二日目に徹と理恵の三人で映画見に行く行く約束でさ、だからその日以外ならいいよ」
樹にも樹の予定があるから、三日間とも空いてたらラッキーくらいの感覚だから、あまり気にしない。ちなみに徹と理恵は同じクラスの人で、小学校から一緒で私の数少ない友達だ。・・・・・・ぼっちじゃにゃいから。
開いた日はどこに行こうかなぁ。
「なにするか決まったら電話かメールで知らせといてくれ。二日とも開けとくから。」
「そう?ありがとう。じゃ、決まったら連絡するね。」
「おう。」
決めたら連絡することにして、樹を正門まで見送り、中へと戻った。
それから一時間後くらいに瑠璃が返ってきて、樹兄ぃとはどんな感じだったのかと聞かれたので、細かく話したけど、なぜか途中からジト目になったり、ため息を小さく吐いたりした。なぜに?
「その感じだと、大分樹兄ぃは気持ちの整理ってやつは出来たみたいだね。」
「うん。本当によかったよ。それと、次なにするかが決まったら、電話するって約束もした。」
「そうなんだ・・・・ふーん」
なんか意味ありげに呟いたので問いただしてみても、なんでもないと一辺倒で答えてくれないからあきらめた。
「どちらにせよ、よかったね、お姉さん」
「うん♪」
「・・・・・・・・これ絶対性格変わってるよ。」
そう呟いた妹の瑠璃だったが、当の凛は次何しようかなぁとか一緒に買い物行こうかなぁと一人で盛り上がっていたのでついにその呟きが届くことはなかった。
(๑•̀ㅂ•́)و✧読んで頂きありがとうございました
凛の性格変わりすぎ?.....そんなことないです。.....ないったらないです!
次もよろしくお願いします。