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アマビエさん、見つめる
「なんでかけてくるんだろうねえ、買うわけないのに」
「しかも昼前の忙しい時間に……」
「切り替え切り替え。患者さんの前では怒っちゃダメだよ」
僕はうなずき、口角を無理矢理上げた。そして投薬カウンターにつくため、階段を降りる。
「順番前後します。三十八番のアマビエさん」
「うむ」
ゆっくりと魚の足が動き、再びアマビエさんが僕の前にやってきた。
「具合はどうですか?」
「大分良い」
「じゃあ薬があってるんですね。良かったです」
「今度は百件制覇したい」
「いけません」
【薬局あるある】良くなったと思うと、患者は無茶をすることがある。




