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【番外編】アマビエさん、音に感動
すぐにじゅうっ、と高らかな音がする。赤い肉がちりちりと縮み、褐色に変わっていった。
「永久に聞いていたい、この音」
アマビエさんは目を閉じ、五感で存分に喜びを味わっている。
「確かに……」
「着信音にしたいです」
「そんな携帯は嫌だ」
僕がツッコミを入れても、妹はにやにや笑っていた。
「さ、割り下をかけるよ」
濃茶の液体がかかると、醤油が焦げる香ばしい匂いが漂う。割り下がぶくぶくと泡立ち、煮詰まって肉にからみついた。
「アマビエ、牛だからもういいよ」
溶き卵が入った容器片手に待っていたアマビエさんが、雄叫びをあげた。




