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【番外編】アマビエさん、バスに乗る
バスといっても公的なものではないため、停留所はない。僕たちは大きなショッピングセンターの前に立ち、道路に目を配った。
紫と金に塗られた車体が姿を現す。目の前に停車し、低い音と共に扉が開いた。
数十人は乗れるつくりだが、老夫婦と若いカップルが離れて座っているだけだった。ありがたく、固まって座らせてもらうことにする。
「どれくらいだ?」
「車なら五分、って公式ホームページにありますよ」
「景色が変わるのが面白いんだよねえ。この街、山も海もあるからさ」
妹の言う通りだ。少し走ると、海の匂いが開いた窓から漂ってくる。




