表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

362/366

後日談2:クライゼとサーバス

 騎手15騎に、鞍無しを3体。


 これが、会戦の中でクライゼの出した戦果だ。


 そもそもだが、騎手は敵を墜とした数によって評価されるものではない。


 伝え手であれば、伝令を内容を誤ることなく確実に届けることが出来たのか。攻め手であれば、伝令をどれほど妨害することが出来たのか。守り手であれば、伝え手をどれだけ攻め手の妨害から守り抜くことが出来たのか。


 そこが評価の基準であった。それほどに、墜とすことも、墜とされることも稀な話なのだ。


 そんな騎手の世界において、しかも短時間で終わった会戦の中で成し遂げたこの戦果。一体誰が、カルバ・アルヴィルにおいて最強の騎手であるのか? それを証明するのには十二分なものだった。


 よって、戦後の祝宴の場において、クライゼはもちろんその中心で称賛を……とは、なっていなかった。


「あー、どうだ? アレがノーラだが」


 彼の姿は祝宴の場にはあった。だが、その回りに人の姿は無く、代わりに一体のドラゴンの姿がある。


 クライゼの愛竜たる白竜、サーバスである。彼女は首を伸ばして、カミールの隣にある1つの人影に目をこらしていた。死んだ表情で挨拶を繰り返すノーラの姿を凝視していた。


 クライゼはサーバスに請われてこの場にいた。


 戦果はすべて、主家たるハイゼ家の政治の材料に過ぎない。自身の活躍にその程度の感慨しかもたないクライゼは、称賛の声などそっちのけで早々に祝宴の場を後にしていた。


 代わって向かったのが、ドラゴンの集積地にいるサーバスの元だ。愛竜の側で静かに酒でも味わおう。そう思って、実際そうしていた彼は、とあることを酒がたりに愛竜に話したのだ。


 ノーラが人の姿になって、えらい目に合っている。


 これが契機だった。どうしてもと請われて、クライゼは祝宴の席にサーバスを連れてくることになった。


(そう言えば、コイツはまだ見たことがなかったか)


 クライゼが知る限りでは、ノーラの変化は討論会以来のことだった。よって、物珍しさがあってのサーバスの懇願だとクライゼは理解していた。


 しかし、よほど興味があるらしい。クライゼが首をかしげるほどに、サーバスはまじまじとノーラをつぶさに観察している。


 そんな時間がしばらく続き、不意にサーバスはクライゼへと声を作ってきた。


「……どらごん。なれる」


 ノーラやラナと比べて、サーバスの言葉は流暢であるとは間違っても言えない。ただ、愛竜の言葉だ。言いたいことは、クライゼには十分に理解出来た。


「そうだな。ドラゴンも人になれるのだな」


 どうやら、不思議なこともあるのだなと驚いているらしい。クライゼはサーバスの心中について、そう理解した。しかし、


「……なる」


「ん?」


「わたし。にんげん。なる」


 クライゼは首をかしげざるを得なかった。


「サーバス?」


「にんげん。なる。くらいぜ。いっしょ」


 今ひとつ発言の意図が理解出来なかったクライゼは、サーバスの視線の先に答えを求めることになった。


 そこには死に体のノーラの他にもう1人がいた。ノーラを心配してか側にいるサーリャだ。1人来客が去り、彼女はノーラの背中をさすってやっているのだが。


「……ふーむ」


 やはり意図はつかめなかった。ただ、なんとなくだ。彼には自身への好意があって、この彼女の発言があったように感じた。


「……まぁ、後でノーラに話してみるか」


 悪くない気分だった。クライゼはサーバスの鼻面を優しくなでさすった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] クライゼさんとサーバスさんはある意味もう熟年夫婦みたいなもんだから…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ