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第15話:俺と、軍神との再会(2)

 カミールさんは悩ましげな表情で口を開かれます。


「アルベールにアレクシア以外は知らんかもしれんが、王都でもかなり始祖竜のことは噂されていたんだ。カルバが始祖竜を(よう)して攻めてくると戦々恐々だったわけだ。陛下も肝が太い方で無ければ、信心深い人であればなぁ」


 話の流れが読めてきたのでした。俺は思わず声を作ります。


「あー、そうして怯えておられる時に、ギュネイの当主が裏切ったと耳にされて……でしょうか?」


「ドラゴンにしては良い読みだな。そういうこった。俺を選んだとは言え、陛下はアルフォンソの忠誠心を疑ってはいなかったからな」


「そのギュネイの当主が裏切ったというのは、やはり大きな衝撃だったと?」


「あのアルフォンソすらカルバに正当性を見出したってな。始祖竜は本物で、カルバにアルヴィルの支配を委ねたのだ……みたいな感じだったか? もう動揺がひどくてな。いくら裏切りなどあり得ないと言葉を重ねても梨の(つぶて)だったぞ」


 そう説明されて、カミールさんは一同を見渡されました。


「で、お前らはどうする? 俺たちが仕えるべき王家は降伏したわけだがな。カルバに頭を垂れるのであれば、早ければ早いほど良いかもしれんぞ?」


 んで、さらりと核心的な所に触れられたのでした。こ、この人はなぁ。重要なことであればあるほど、なんでもないよう口にされるよなぁ。


 実際、そこは重要なことなんですけどね


 道中でも、皆さんが悩まれているところでした。アルヴィルが降伏したとなれな、家臣である自分たちはどう振る舞えばいいのか?


「……カミール殿。まずは貴殿について、我々は聞かせていただきたいものだが」


 静かにハルベイユ侯でした。確かに、そこは気になるよなぁ。カミールさんは、この場でもっとも立場が上であれば、王家の血縁者であり……王家に代わることだって出来る方でありますし。


 そして、珍しい反応でした。カミールさんは、この人にしては珍しくため息をつかれました。


「はぁ。まぁ、そこはな? 面倒だが、俺は最後まであがかざるを得ないだろうさ」


 あがく。ということはつまりです。


「カルバに最後まで抵抗すると?」


 ハルベイユ侯の問いかけに、カミールさんはうんざりとして頷きを見せられます。


「現在のカルバの狂犬じみた有様と、お前たちから聞いた始祖竜……テセオラだったか? そいつの話があればな。このままでは、アルヴィルの民々がどこに向かわされるのか分かったものではない。リャナス当主として、ここで膝を屈するのは許されるものでは無いだろうさ」

 

 大貴族としての責任感……という話なのでしょうかね。ハルベイユ侯はこれに頷きを見せられました。


「貴殿の発言に同意しよう。今のカルバはまともな国とは言えん。我が領民たち、それにアルヴィル王家をカルバの下に置くわけにはいくまい」


 親父さんにハイゼさんも頷きを見せられていました。ハルベイユ侯領としての総意ってことになるのでしょう。そして、そうなると娘さんも当然……だよね。


 力強い目をして頷きを見せられていました。絶望的な状況で戦いを続けられるということになるようです。


 俺も当然です。娘さんの騎竜として、その選択に従うまでですが……やべぇ、胃がちょう痛い。


 こんなことになるような気はしていたんです。


 ここまでの道中からは状況への戸惑いはありつつも継戦の雰囲気しかありませんでしたし。


 となると本当……アレだよね。俺に求められるものというのを、否が応でも認識せざるを得ないわけで。


 とにもかくにも場の総意は決まったようでした。カミールさんは頷きを見せられます。


「では抗戦だな。とにかく問題は諸侯の出方だが、とりあえずは様子見か。別に奮ってやるようなことは無いからな。それぞれ適当にくつろいでおけ」


 実際には現状で能動的に実行出来ることは無いって話なんでしょうけどね。なんにせよ、これでお開きということでしょう。


 そう思って、俺は胃の痛みなんかを抱えつつ陣幕を後に……って、ん?


 ちょいちょい、って感じです。俺の視界では、カミールさんが無表情に手招きをされていました。


 何か俺に用事があるようです。なんか……嫌な予感がするなぁ。


 行きたくないなんて正直に思うのですが、そこに娘さんです。カミールさんの振る舞いに気づかれたようで、「ん?」なんて首をかしげられます。


「閣下がお呼びのようだけど……は?」


 娘さんは怪訝そうに眉をひそめられました。それはですね、カミールさんがお前はいらんって感じで手をしっしと振られたからで。


「……なにあの人? 感じ悪いし、ノーラだけに……どうする? なんか無茶苦茶言われるんじゃない?」


 心配してもらえているようですが、俺はよーく分かっているのでした。カミールさんが俺に何の用事があるかって本当、うん。


「あー、大丈夫です。ちょっと行ってきます」


 娘さんに聞かれたくもなければ早速足を向けます。しかし……はぁ。正直嫌だなぁ。


 あの方には、ハルベイユ侯から連絡が行っているはずだからね。俺が、人に化ける練習をしてるって。


 だから、待っているのはその点についての話のはずでした。もちろん俺は、まだ全然出来ていません。この状況を考えれば、せっつかれるのは間違いないわけです。これはなぁ。胃が痛くもなるよなぁ。


 そうして、うつむきがちにカミールさんの前に進み出ます。さて、どんな一声が待ち受けているのかなんてビクビクするわけですが、


「うむ」


 なんて一言でした。そして、カミールさんはバシバシと俺の鼻面を軽くはたかれます。


 えーと、なに?


 思わず不審の目線を向けさせてもらいますと、カミールさんは1つ頷きを見せられました。


「気にするなよ」


 それだけでした。そして後はさっさと帰れって感じです。しっしと娘さんにしたように手のひらを振られます。


 俺は一礼させていただいて、動作の通りに身をひるがえさせてもらったのですが……まいったなぁ。


 ちょっと天を仰ぐことになります。


 なにをグズグズしている? さっさとやれ! なんて罵倒された方がよっぽど良かったかも。


 こうも同情していただくとね? 俺だって、そりゃ……さっさと化けられないとなぁって思わざるを得ないのですよ、えぇ。


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