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第14話:俺と、軍神との再会(1)

「よぉ」


 なんか久しぶりですね、本当。


 ハーゲンビルから北に離れ、すでにハルベイユ侯領を間近とする平野です。


 そこに並ぶ陣幕の1つの中です。俺は懐かしい顔を目の当たりにしていました。やっぱり、この方はいつも皮肉な笑みを浮かべておられるように見えますよねぇ。


 そういうことで軍神さんとの対面でした。目の前に立っておられるのは懐かしのカミール・リャナスさんです。この方は「ふーむ」なんて軽くあごをさすられました。


「久しぶりだが、別にそんな感じはせんな。おい、サーリャ。元気だったか? 情緒が不安定であれば、お前はよく分からんからな」


 そうして気にかけてもらった娘さんですが、ひっじょーに無表情でした。そして、無表情のままにカミールさんに近づかれます。んで、そのカミールさんですが、こちらは無表情に手を広げられました。


「抱き合って再会を喜びたいというわけか? ふむ。そこまでの仲では無かったと思うが、俺は別にかまわんぞ?」


 そういうわけでは無さそうなのでした。娘さんはスッと大きく息を吸われます。そして、


「閣下っ!! なんですかっ!? 何、妙な時に王都を追放されたりしてるんですかっ!!」


 盛大に文句をぶつけられたわけでした。カミールさんは「ふーむ」なんて呆れの視線を見せられます。


「お前はなぁ。普通は、忸怩(じくじ)たる思いがあったことでしょうとか気を使うもんだぞ? 挨拶代わりに、いきなり吠えかかってくるヤツがいるか」


「そりゃ吠えさせてもいただきます! こっちはあと一歩だったんですからね! それなのに、こんなことになってるんですからそりゃあもう!」


 まぁ、はい。


 その態度は大丈夫なんでしょうかとは思うものの、おっしゃりたいことはよくよく理解できました。


 本当、全てがご破算って感じでしたし。


 せっかくテセオラに重傷を負わせて、いよいよ反攻戦って感じだったんですけどね。カルバとギュネイ派が手を結んで、それにビビった王家が降伏宣言しちゃったとかで。さらには、カミールさんがそれで王都を追放されたとかで。


 攻勢に出ている場合じゃなくなっちゃったもんねー。

 

 ということで、ひとまずハルベイユ侯領に退いているところなのですが、本当全ての予定が狂っちゃてる感じです。


 ただ、カルバとギュネイ派が手を結んだのはカミールさんの責任とは言い難いし、王家がそれで降伏状態になったのもねぇ? なんて思っておりますと。


「あのな、俺も大変だったんだぞ? まったく晴天の霹靂であれば、よく分からん内に追い出されたというのが正直なところでな」


 当人にも同様の思いがおありのようでした。ただ、これに対する娘さんですが。


「そこがダメでしょうとも! 実質、この国の最高権力者なんですから、こうもっとがんばっていただかないと! こう本当、もっとですよ、もっと!」


「もっとなぁ。おい、ノーラ。前から思っていたがな。コイツ、俺のことをラウの近所のおっさんか何かかと勘違いしてないか?」


 多分、そうではないと思いますが、なんか妙な相性の良さがあるんですかねぇ。


 ともあれ、娘さんと旧交を温めてばかりいてもらうわけにはいかないわけです。


 この場には、国境で戦っていたアルヴィル組の主要な面々が揃っていました。カミールさんとの再会を一緒に喜んでいる……って意味も多少はあるのですが、それ以上にこの緊急事態なので。


「遊んでいる余裕はあるまい。説明をいただきたい。王都で何があったのだ?」


 ハルベイユ侯が鋭い目をされて問いかけられました。カミールさんはけだるげに頷かれます。


「別に、貴殿らの聞いていることと変わりはないだろうがな。カルバとギュネイ派が手を結んで、そのことに恐れおののいた陛下が降伏だなどと口走られただけだ」


 確かに、その内容は俺たちが知るものと大差無かったですが、王都におられたからこその知見というものを発揮していただきたいところでして。


 ここで、手を上げられる方がいらっしゃいました。


「あのー……よろしいですか? 本当に親父ど……アルフォンソ・ギュネイはカルバに寝返ったので?」


 それはアルベールさんであり、そんな質問の内容でした。


 確かに気にかかることでしょう。アルベールさんは、笑ってそんなことはあり得ないとおっしゃいましたが、聞こえてきた現実は裏切りというものでしたから。


 カミールさんは淡々と首を左右にされました。


「いや? 少なくともあの当時は、アルフォンソは裏切ってなどは無かったと思うが」


 俺は「へ?」ってなるわけですが、当然アルベールさんも「へ?」となられます。


「あー、裏切ってはいないのですか?」


「お前が一番知っていると思うが、アイツがアルヴィル王家を裏切ることが出来ると思うか? そんなことは考えるだけで気持ち悪くなるのが、アルフォンソ・ギュネイという男だと俺は思っていたが」


「は、はい。俺の理解もそれで、だからこそ伝令に驚いたのですが……」


「大方、王都のギュネイ派が無駄に暴走した結果だろうな。アルフォンソ本人も驚いているだろうことを思えば……ふーむ。愉快と言えば愉快か?」


 別に愉快でも何で無さそうなカミールさんでしたが、ここに集まった一同もそんな感情とは無縁そうでした。


 だって、別のことで頭が一杯でしょうから。俺だってそうです。ということはですよ? 王家はですね? 王家はその、つまり……


「お、起きてもいない裏切りに慌てて降伏みたいなことになっちゃったんですか?」


 俺が呆然として作り上げた言葉に、カミールさんは淡々と頷かれます。


「そうなる。世の中というのは、なんとも面白いものだな?」


 別に面白くもなんともないわけで、娘さんが再び声を張上げられることになりました。


「な、なんですかそれは!?  閣下はどうされたんですか? ちゃんと陛下に、そうとはお伝えされたんですよね!?」


「そりゃまぁな。ただ、あの方はすでに怯えておられてなぁ。まったく、始祖竜の威力というものはな」


 ここで初めてでした。カミールさんは状況にふさわしいと言いますか、苦慮の表情を浮かべられました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] よくみたらついに最終章なんですね…なんだか感慨深いです。 [一言] 王家ってほんとこの物語で存在感ないよね…
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