第12話:俺と、勝利の夜(2)
俺は当然問いかけることになります。
「あの、サーリャさん? 東とは一体?」
「いや、東は東で大変でしょ? えーと、あー、そう。色々と」
アルベールさんを横目にうかがいながらの娘さんでした。これで俺にも分かったのですが、気遣いを受けた当人さんも当然承知されているようで。
「あぁ。俺の親父殿のことか」
これでアレクシアさんも理解されたそうでした。1つ頷きを見せられます。
「なるほど。東で何かあれば、もちろんこちらも影響が出るしょうからね」
「はい。そこが心配なのですが、そもそもどうなんでしょうか? 今って、向こうに何か動きは出ているんですか?」
そう言えば、その辺りって気になりますよね。アルフォンソ・ギュネイの勢力はいまだに健在で、カミールさんの勢力と対立が続いているはずですが。
アレクシアさんが引き続き娘さんに応えられます。
「今のところは何も。目立った動きはありません」
「軍事的な衝突などはないので?」
「それも何も。ギュネイ派に反攻に打って出るほどの戦力はなければ、カミール派にしても堅陣であるギュネイ領に攻め込めるほどに政治的に安定しているわけでは無いので。結果の膠着状況ですね」
それが現状のようでした。ただ……今日は大勝出来たとは言え、西に脅威を抱えているのが現実ですし。
「ここで、ギュネイ派が総攻撃……なんてことはないんでしょうか?」
ギュネイ派がこれを好機と見てなんて不安があるのですが、
「いや? それはまぁ、無いだろうさ」
あっさりとアルベールさんが否定されたのでした。
「えーと、無いんですか?」
「憶測だけどな。ただ、あの親父殿はそこまで間抜けじゃないだろうし」
「間抜け?」
「あぁ。ノーラも知っているだろうけど、あの人は本当勤王の人だから。カミール閣下を処刑しようとしたのだって、王家への専横を防ぐためって本気で考えてのことだったし」
「そういえばそうでしたね。じゃあ、カミール閣下を排除するためとは言え、今大攻勢を仕掛けるのは……」
「侵攻軍を利することにもなれば、アルヴィル王家の裏切りにもなる。あの親父殿にはんなことは出来ないだろうさ」
俺は、あの人の人柄を思い出していました。あの人が忠義の人であることは確かなわけで。アルヴィルを窮地へ追いやるようなことには加担はしないのかなぁ。
「となると、カルバと組んでカミール閣下を……みたいなことも?」
ここはハーゲンビルなのですが、そういえば昔、アルフォンソはカルバと組んで、カミールさんを亡きものにしようとしたことがあったようなってことで。
その当たりの思いつきを声にさせていただいたのですが、これもなさそうかな?
アルベールさんは苦笑で首を左右にされます。
「それはもっと無いだろうな。侵略軍に加担するなんて、明確なアルヴィルへの裏切りだ。それが出来るあの人じゃないさ」
「だとすると、我々は西に専念出来るってことに?」
「あぁ、専念出来る。この好機は逃さずにはすむってわけだ」
これで娘さんの懸念には結論が出たようです。娘さんが安堵の笑みを浮かべられ、俺もまた安堵の心地を味わいます。
これでなんとかなりそうです。
テセオラが病床に伏せっている間に、全てに片をつけるって。
これ以上、人化出来ないことを気に病みたくないですからねぇ。俺のためにも、皆さんのためにも。ここは頑張りどころでしょうとも。
◆
そして、翌日が来ました。
早速の反攻作戦。テセオラが復活しようが関係ないぐらいに敵をメッタメタにしてやりましょうとも!
全軍がそんな調子でした。ただ……そんなところに伝令が来たのです。
カミールさんが王都を追われた。そんな内容の伝令でした。
あー、なんでもです。アルフォンソ・ギュネイがどうやらカルバと手を組んだとかで。言い方を変えれば、アルヴィルからカルバに寝返ったってことですね。
その結果、こりゃたまらんと王家はえーと、降伏? みたいな感じらしいです。で、ギュネイ派の求めに応じて、カミールさんを追放したとか。
はい、そういうことらしいです。
なんか話違くね? とか、思いますがね。とにかく、そういうことらしいのです。えー?




