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第10話:俺と、反攻の一戦(2)

 憎いあんちくしょうは乱戦の最中にいるようでした。


 敗走に入っていたはずの俺たちの、突如の強力な反攻……それも秘密兵器ありの反攻を受けてですね、鞍無しどもは見事に混乱してくれているみたいです。


 だからこそテセオラも、今までのように不利になればって撤退しきれてはいないようで。クライゼさんを始めとした騎手たちの猛攻を受けて右往左往してくれています。


『……っ!! えぇい、退けっ!! とにかく退けっ!!』


 こんな叫びも聞こえてきまして……ふふふふ。いーい焦りっぷりしてますねぇ。


 金色のうろこは遠目からも目立つのですがね。アイツの様子はよく分かりました。場当たり的に戦闘を続けながら、必死に逃げ道を探している感じかな?


 とにかく、俺たちのことはさっぱり忘れている感じですかね? これはうん、これは良いね。


「サーリャさん」


「だねぇ。じゃ、下からか」


 そういうことで、低く軌道を取ります。


 王道の攻め口でした。騎手からは眼下は見えづらい。今回は騎手はいませんが、ドラゴンにしたところで目は下にはついていませんので。


 こうして低いところから攻めれば……良い具合に奇襲的に働いてくれるんですよねぇ。


 さらには、下からであればドラゴンの柔らかい腹側を狙えるのです。


 そして、娘さんの達人芸でした。せわしなく飛び回るテセオラの視界に入らないように、最適の軌道の指示が来ます。

 

 うーむ、気分はサメかシャチの気分。海上でぷかぷかと白い腹を見せているアザラシさんを狙っているような気分で……今か。


「行って!!」


 気合を求められたので気合を出します。やる気が十分であれば体も気持ち軽いような。即座に上昇をかけて、テセオラの視界を避けつつ肉薄。


 魔術は必要ないかな。娘さんの手綱さばきから理解出来るわけです。どう穂先を突き立てて、どう抜けていくか。もう全てが視えておられる感じがありますし。


 ということで、こんにちは、テセオラさん。


 テセオラが俺たちに大きく目を見開いてきたのだけど、時すでに遅し。すでに目と鼻の先であれば、迎撃の魔術もね。そりゃ間に合わないってことで、はい。


『ぐぅっ!?』


 通り過ぎて反転。すると、そのうめき声の理由がよく分かるのでした。視界に映るテセオラの腹部です。そこからは確かに伸びる細長い影がありました。


 娘さんは見事に槍を突き立てられたということですね。うーん、さすが。一方で、テセオラもさすがと言えばさすがと言うか。


 ドラゴン的にもそこまで浅い傷じゃないはずなんですけどね。ただ、テセオラに闘志を失った様子はありませんでした。


 ギロリと目を剥いてにらみつけてきます。闘志の発露ってだけじゃないでしょうね。魔術を現実化するための視線を走らせたのでしょう。ただ、その槍はただの槍では無いわけです。


『……ッ!? これは……術理封じか!?』


 きっと鞍無したちの本場にも、同じような代物があるんでしょう。ともあれ、これで完全にこちらが有利でしょうとも。肉体的にも精神的にもね。


「仕留めるっ!!」


 娘さんが気勢を上げられます。俺だってもちろんそのつもりです。相手が動揺しているすきを突いて背後を取りまして、続くは当然のドラゴンブレス。


 三発を撃って、二発が命中。『ぐっ』と軽い呻き声が聞こえましたが、うーん。そうか、こうなるか。


 黒竜もそうでしたし、鞍無しどももそうですが。コイツらタフだからなぁ。ドラゴンブレスを二、三当てた程度じゃあ、さほどの効果はね。決定打にはなりはしないか。


 ですが……まぁ、アイツを狙っているのは俺たちだけじゃないし。


 クライゼさんが熟達の立ち回りで鞍無しどもを引きつけて下さっているようなので。ノーマークの騎手さんたちが、テセオラに殺到してくれています。


『この……家畜に堕ちた雑魚どもがっ!!』


 あの冷静なテセオラが怒声を発していますが、つまりそういう状況です。圧倒的有利。ドラゴンブレスを当てるタイミングはいくらでもって感じで。


 あとは、いっそ作業じみていました。


 確実にドラゴンブレスを命中させていく。俺と娘さんだけでも追加は5で当てたでしょう。あるいはタフさだけは黒竜以上かなんて思わされたのですが……よし。


 フラリと、テセオラの飛影が揺れました。


 後は崩れように眼下の森へ。堕ちていく。いや、まだ余力はあるか? 落下の勢いを殺すぐらいのことはしているみたいで。


「追うよっ!!」


 娘さんが叫ばれます。当然、その選択肢しかありません。俺は急降下して、テセオラの後を追います。だが、


『う、うぉっと!?』


 俺は慌てて独断での軌道修正でした。森から魔術の炎が幾筋も伸びて来たのです。人間の魔術でしょうが、ドラゴンはともかく娘さんを丸焦げにするぐらいの威力はあるわけでそりゃ避けざるを得ないわけです。


「の、ノーラ! ごめん、ありがとう!」


 お礼と共に上昇の指示が来ました。そうして俺たちは炎撃を避けながらに眼下をうかがうことになります。どうにも、どうだ? テセオラはやっぱりしたたかだってことなのか。


 自然と墜ちたと言うよりは、眼下に援軍と言うか逃げ道を見出して逃げ込んだって感じなのでしょうかね?


 これはどうするべきか。回りの騎手さんたちも逡巡しての上昇を見せておられますが、俺にしてもなぁ。風の魔術が使えるとはいえ、先ほどの魔術の迎撃はなかなかの密度でした。テセオラにトドメを刺すよりも先に、俺と娘さんが焼き肉になる方が早い予感が。


「……ちっ。出来ることをするしかないか」

 

 それが娘さんの結論のようでした。周囲の騎手さんのお一人に、テセオラに関する伝令を頼んだ上でこの場を後にします。


 あとは地上部隊にお願いってことですね。俺たちは引き続き、鞍無しだったりカルバの騎手、騎竜を相手に可能な限り打撃を与えようって。


 うーむ、なんとも言えない消化不良感。ただ、戦果としては抜群であることは言わずもがなのようでした。


 金きらりんで非常に目立つテセオラなのです。その墜落もまた、多くの方の目に留まったようでして。


 ドラゴンの耳にはよく聞こえました。味方からは勝利を確信する喜びの声が、相手さんからは始祖竜が堕ちたことにまつわる絶望の声が巻き起こっています。


 この戦場に関してはもはや断言しても良いでしょう。勝った。あとは程度問題です。どの程度の勝ちに出来るかってことで、さてはて。そこに貢献させていただくとしましょうかね。


 俺は娘さんの指示のもと、勝利と絶望の声に満ちた空に飛び込みます。


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