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第5話:俺と、反省と期待(1)

 前回までのあらすじ。逃しちゃいけない相手を逃してしまった。


 そんなこったで、俺はとある村の人気(ひとけ)の無い片隅で膝を抱えていました。いやまぁ、ドラゴンの構造的にそんな体勢は出来ないけど。気分ですよ、気分。実際は、丸くなっているわけだけど、本当そんな気分。


 本当になぁ。


 逃しちゃいけなかったなぁ。アイツは本当逃しちゃいけなかった。


 そして、そんな思いを抱えているのは俺だけじゃありませんでした。俺の隣には、実際に膝を抱えている方がおられまして。


「……やっちゃったなぁ。あの時、もうちょっとがんばってたらなぁ」

 

 顔色悪く呟きをもらされているのは、我が騎手殿です。娘さんです。若干目もうつろのよう見えますが、そりゃこうなるでしょうって言うか。


 テセオラを逃してしまった。


 その影響は本当に大きかったのです。あの日から、テセオラは毎回戦場に出てくるようになって、カルバを褒め上げたり、俺たちをなじり倒したりでやりたい放題。


 相手の士気がうなぎのぼりであれば、逆にこちらはドンガラガッシャンのナイアガラ。


 善戦と言っても良かった状態が、なんとか撤退戦をこなせているぐらいに変わってしまいました。このままじゃ、いずれ潰走もという状況であれば後悔しかありませんが……でも、アレを娘さんの責任とするのは厳しすぎる話ですし。


「いえいえ、サーリャさん。あれは仕方がなかったと思います。サーリャさんは出来る限りのことはしましたって」


「えーと、そう?」


「そうですそうです。あれ以上は、出現を予期でもしてないと無理ですってば」


 咄嗟の状況に対して、さすがの対応力を見せられたと俺は思いますがねぇ。


 多分、娘さんもあれ以上は無かったと冷静に自覚されているのでしょう。力ない表情ながらにも、わずかに笑みを浮かべられました。


「あー、だよね? あれ、けっこう一杯一杯だったよね? あれ以上って、なかなか難しいよね?」


「そうですそうです。あの状況でするべきことは出来たんじゃないかと」


「だ、だよね? 私けっこうがんばったもんね? 私もノーラもそんな引きずらなくっていいよね?」


 もちろん、と俺は頷かせてもらいます。


 あの件はそうなのです。俺も娘さんも、出来る限りのことをしたのであれば落ち込む必要はありません。


 ただ……うーん、ただ……墜としたかったよなぁ。本当、墜としておきたかった。


『はぁ』


 ため息だってもれますが、だってそれはね。娘さんの知らない俺の現状が原因でありまして。


 だって、変身出来てないですもん。


 俺はまださっぱり人間に変身出来てないわけです。窮地にあって、まったく役に立てていないわけです。


 このことを思うと本当になぁ。仕留めておきたかった。仕留め切れていれば、俺が死にそうなレベルで思い悩むこともなければ、娘さんから魂が半分ぐらい抜けることが無かったし、これから先に娘さんを危険にさらすことも無かったのです。


 ただ、現実はコレです。


 俺は地にアゴをつけての『うーむ』でした。どうしたもんかねぇ。なんで俺は、人間になれないですかねぇ。


 そこを悩まざるを得ないよね。


 現状で状況を打破出来る要因は、俺が人間に変身することぐらいでしょうし。人間に変身さえ出来れば、こっちの士気がこうもグズグズにはならないでしょう。


 さらには、始祖竜が唯一では無かったっていうのは、向こうさんにとってはそれなりの打撃でしょうし。自分たちだけが絶対的に正しいとは思えないようになるわけで。


 だからこそ、俺は人間に化ける必要があるのです。


 でも、出来ないんだけどね。うーむ。娘さんのためにも変化する気はあるんだけどね。でも、出来ない。なんでだろうね? まさか、娘さんへの愛が足りない? いやいや、バカな。この世の中で、俺ほど娘さんを愛しているドラゴンは他には……


「あーと、ノーラ? またけっこう悩んでいる感じ?」


 無表情なドラゴンのくせに、うじうじしているところは伝わってしまうのが俺クオリティーと言いますか。


「まぁ……ちょっとやっぱりはい」


 素直に悩んでいること自体は白状します。娘さんは苦笑で俺の鼻をポンと叩かれました。


「君はなぁ。鬱々としてた私が言えた義理じゃないけどさ。そんな悩まなくていいってば。騎竜としても、始祖竜っぽいドラゴンとしてもね」


「そう……でしょうかねぇ」


「大丈夫だって! 援軍が来てるんだからさ。ちょっと悪い状況になってるけど、それで風向きも変わるよ」


 笑みでの娘さんに、俺は頷きを見せさせてもらうのですが……うーむ。


 正直、その辺りを俺はちょっと疑っているのでした。


 だって、俺たちだってこうなのよ?


 始祖竜もどきがいると承知しながらに、魔術を操る鞍無しドラゴンと戦い抜いてきた俺たちでもこうなのだ。


 始祖竜もどきの存在、その言動を目の当たりにしたら、こうも見事に意気消沈してしまったのだ。


 果たして、援軍が戦力になってくれるのかってね。始祖竜が人に変化するところなんかを目の当たりにしたら、その場で寝返っちゃうんじゃないかって不安すらあるよなぁ。


 そう考えると、うん。


 やっぱり始祖竜って大事。そして俺は始祖竜もどきになれる素質があるわけで……よし。



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