表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
308/366

第1話:俺と、穏やかですが、んー?(1)

 よー分からんドラゴンたちの襲撃は、当然色々なことを変えることになりました。


 その1つがこの状況そのものかな?


 相変わらず暑いことこの上ないけど、やっぱり村の外れとは居心地が違うよなぁ。


 そんな感じで俺は放牧地にいました。太陽サンサンで緑がモリモリだけど、うーん。吹き抜ける風が違うし、なんとも爽やか気持ちいいー。


 なじみの放牧地ではありませんでした。カルバへの救援を終えて、無事にラウのお屋敷に帰還出来たというわけでは無いのです。


 一時撤退して、カルバ体制派の砦にお邪魔しているのでした。


 そこの放牧地にお邪魔しているのです。ドラゴンたちの襲撃は、俺たちに引き続きの軍事行動を許すようなもんじゃなかったってことでしてね。後退して体制を整えつつ、反体制派やあのドラゴンたちの情報を集めているということで。


 俺たちが完全に勝機をつかんでたのにねぇ。まぁ、幸いと言って良いのか分からないけど、俺たちドラゴン組はこうして平穏を味わうことが出来ていたりしますけど。


 さて、戦闘狂ドラゴンどもがもたらした影響はこれだけではありません。1つ目はぶっちゃけ迷惑極まりないものでしたが、2つ目は……その、なんと言ったら良いのやら。


「ノーラ。あーん」


 やだ、まだ声をかけられるたびにちょっとビクビクしちゃう。なんか怒られるのでは? って怯えちゃうのですが、現実はさにあらず。


 丸くなる俺の腹がわです。そこにはちょこんと1つの人影が収まっていました。


 誰? って、そりゃアレですがな。あの人以外に、こないなことする人おりませんがな。


「ノーラ? だから、あーんだってば」


 戸惑う俺を無邪気な瞳で見つめてくる天使さんがいらっしゃるのですが……そらまぁ、その方は娘さんに他になりません。


 俺はあーんなんて気分には無く戸惑い続けることになります。マジで戸惑いしかないよなぁ。でも、現実はこれなのでした。


 娘さんは、カルバの人からお魚の燻製みたいなのを貰ったみたいで、それをちぎって味わっていて。そのおこぼれを、俺なんかに慈悲深くお与えくださっているのです。


 ……なに? 本当なに? 一体何が起きたの? そもそもだけど、これって異世界ドラゴンズの影響でいいの? もしかして娘さん、俺の知らないところで洗脳手術とかの被害にでもあった? この世界のエイリアン的サムシングのアブダクション的なインシデントの対象にでも?


 ほんと、さっぱり分からん。


 ただまぁ、ありがたい状況であることに変わりはなく。とにかく、言われた通りにあーん。娘さんは俺の口内にちぎった燻製をぽいっちょ。俺が口を閉じると、ニコリとほほ笑まれます。


「どう? おいしい?」


 もちろんのこと、私めは味覚オンチのドラゴン。香ばしい匂い以外への感慨はありません。ただ、笑顔の娘さんに俺が出来る反応なんかはね。


「は、はい。大変おいしゅうございます」


「あはは、なにそれ。変な口調」


 あどけない笑みを娘さんは浮かべられます。とりあえずのところです。なんか困惑なんてするりと溶けちゃうよなぁ。俺の胸中には、この状況へのありがたさばかり。この幸せを、素直に受けとっておけばいいのかねぇ。


 ただまぁです。俺という存在に幸せばかりが訪れるわけがないのです。


 あのドラゴンどもがもたらした変化の、これは3つ目ですけどね。これも俺の大切な存在に訪れた変化でした。なんかね? 俺の大切な友人の様子がその、なんか妙にそのアレでして。


『……なんか嫌な予感がするとは思ったけど……なによ。くっそ腹立つ』


 まぁ、はい。


 やや情緒不安定の感があるのは、ラウ家組において俺を除けば一体しかありません。


 ラナさんです。今の彼女は犬座りで、野原をしっぽでべしんべしんとやっつけているのですが……え、えーとなに? 


 すごい目だった。ラナがすんげぇ目で俺をにらみつけてきてる。


『あ、あのー、ラナ?』


『おい、こら。くそノーラ。なにやった? なにやりやがった? いいからさっさと白状しろ』


 んなこと言われてもって話だった。俺に身に覚えなんてさっぱり無いし、そもそもなんでラナが怒っているのかさっぱりだし。なんか、世の中さっぱり分からないことだらけだよなぁ。


 そして、ラナに答える術を持たない俺はビクビク脅えるしかないのでした。ど、どうしよう。返答次第じゃ首筋をメシャっといかれそうだけど、これはどう反応すれば?


「ねぇ、ノーラ。ラナもこれ欲しい感じ?」


 そしての娘さんでした。場の空気をそう解釈されたようです。もちろんのこと、ラナは不機嫌そうに応じてきた。


「違う。別に欲しくなんか無い」


「そう? いいから食べてみなって。ほいさ」


 ここ最近余裕たっぷりの娘さんですので。ラナの不機嫌な様子を気にされることなく、ポイっと燻製を投げられました。


 で、ラナは思わずといった感じでパクリごくり。その上で、な、なに? 俺をじっと見つめてきたけど。


『……コイツさ、食べちゃっていいよね?』


 もちろんよか無いです。こ、怖いってば。その凶暴性の発露は、ちょっと邪竜に過ぎるってば。


 しかし、噛むに収まらない何かを娘さんに覚えているってことなのかね? なんかよー分からんなぁ。コイツ、そんな人間に興味無ければ、娘さんに敵意はともかく殺意を覚えるような余地は無いような気がするけどねぇ。うーむ。


「にしても! ひまっ!」


 いきなりの娘さんでした。そう口にして、俺の体に勢いよく頭を預けてこられましたが。


「えーと、ひまですか? そう言えば、最近ここに入り浸っておられますよね」

 

 この辺りがラナを不機嫌にする一助になっていそうですが、ともあれそうなのです。


 娘さんはけっこう放牧地に入り浸っていらっしゃいました。メルジアナさんやレオニールさんが一度もいらっしゃらない辺り、皆が皆ひまをしているわけじゃ無さそうなんだけどね。


 サーリャさんは俺の目を見ての頷きを見せられます。


「そりゃね、ひまだもん。軍勢の再編やら、反体制派へ探りを入れたりとか。やることは色々あるよ? でも、それってほとんど上の人の忙しさだし。探りを入れるったって、私みたいなよその国の人間に出来るところは少ないし。だから、ひま。いち騎手風情に出来ることは無いってさ」


 俺は納得の頷きを返すことになります。まぁ、そうかもですねー。クライゼさんは今、サーバスさんと付近の偵察に出ておられるそうなのですが。ハルベイユ侯領組の騎手に出来ることはその程度かもなぁ。


「でも、良かったよ、うん」


 笑顔で娘さんでした。俺は首をかしげて見せることになります。


「良かったですか? なんか退屈が苦痛で仕方がないって雰囲気でしたけど」


 娘さんは「あはは」と笑って頷かれました。


「まぁね。正直、そんなところはあるよ? でも……」


「でも?」


「ノーラとこういう時間を過ごせているから。本当、良かったって思ってるよ」


 そうして、娘さんは俺に目を細めた笑みを見せられましたが……ぬ、ぬおー。俺は思わず目をそらしてしまいます。


 なんて言ったら良いのか。ドキリとしたって感じでしょうかね、えぇ。


 これも変化の内の1つかな? 最近、娘さんこういう目をされるんだよなぁ。もとから慈愛に満ちた目つきをされる娘さんなのですが、もっとこう……本当、なんて言ったらいいのか。とにかくドキリとさせてくるものなんです。今までとは違った愛情を感じさせるものなんです。


 この目つきを俺は知らない。人生においても竜生でも受けたことは無い。本当何なのか分かりませんが、まったくドッキドキです。なんか心臓痛いなぁ。ちょっと鼓動が収まりませんよ、はい。


『……チッ』


 そこに響いた邪竜の舌打ちでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おお、更新ありがてぇ... [一言] 邪竜扱いはひどいw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ