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第24話:【ラナ視点】なんか嫌な予感(1)

 なんか、コイツといると嫌な目に一杯会うような気がする。


 丸くなって体を休めながらにだけど、私は隣に座るうざいヤツをうんざりと見上げることになった。


「アンタさ、えーとなんて言うの? 疫病神? 実際そういうのじゃないの?」


「い、言うに事欠いて失礼なっ! 誰が疫病神ですか撤回しなさいっ!」


 サーリャが多分雰囲気的に怒ってきたけど、ふん、どうだか。前の遠出の時も色々あったけどさ。今回も、よく分からんことをくっちゃべるよく分からん連中に襲われることになったし。で、ノーラともアルバとも離されて、どことも知れない山の中で一夜を過ごすことになってるし。


 どう考えても疫病神よね、どう考えても。それでコイツも同意見なのかしらね? サーリャと一緒に座っている、サーリャより大きめの人間だけど笑顔? そんな表情で頷き? なんかそんな動きを見せてきた。


「はっはっは! そうか、サーリャ殿は疫病神か。なるほど合点がいった。サーリャ殿は色々と経験してきたようだが、今回もそれか? まったくとんだことに巻き込まれてしまったなぁ」


「め、メルジアナ様! そんなわけが無いですから! そんなわけが……無いと思うけどなぁ」


 そうしてサーリャはちっちゃい頭をかしげた。なんか困っているっぽいけどいい気味よね。ただまぁ、正直今気になるのはそこじゃないけど。


「で、どうなのよ? 変なことになってるけど、ちゃんと帰れんの?」


 前回は長かったけどさ。今回はそんなことにはならないわよね? ってことが言いたいわけだけど。


 応じてきたのサーリャじゃなくて大きい方の人間だった。


「もちろん、もちろん。無事に帰れる見込みは十分にある。だな、レオニール?」


 ここにはもう一人もっと大きめの人間がいてさ。多分、男。そいつは大きいヤツの隣で頷きっぽい動きを見せてきた。


「は、もちろん。魔術を扱うドラゴンへの処し方は、すでに我々が身につけているものです。サーリャ殿のご助力もあれば、必ず窮地は脱せられるものと。しかし……二体といるものなのですなぁ。言葉を操るドラゴン。しかもこちらはなんと言うか、ざっくばらんと申しますか」


「ははは。だなぁ。ノーラ殿を知っていると、なんとも新鮮味があるな」


 二人して私を見つめてきて、よく分からんけどサーリャはひかえめな笑みっぽい顔で小さく頭を下げた。


「す、すいません。あの、ノーラが特別なのだと思って下されば」


「それはそうだろうなぁ。人間の礼儀作法なんてドラゴンにとってどうもよいか」


「そういうことでありまして。とにかく、ラナ? 大丈夫だから。ちゃんと帰れるように私もがんばるから。力を貸してね?」


 別に帰れるだったら私はなんでもいいわけで。最近はそれほどうるさく無ければ、指示に逆らう気は無いし。とりあえず見返しておく。サーリャはいつもの表情だった。笑顔で頷いてきた。


 んで、大きいヤツもだった。笑顔っぽい表情で頷きを見せてくる。


「私たちも全力で力を尽くすからな。そこは期待しておいてくれ。それにほらアレだ。ここにはサーリャ殿がおられるのだ。そのことを私たちは忘れてはならんと思うがな」


 サーリャは今度は大きいヤツに頷きを見せた。


「はい。黒竜との対峙における経験を活かして、全力で腕を振るいたいと思います」


「それはありがたい。だが、私が言いたいのはそうでは無いぞ?」


「はい?」


「愛する自らの騎手がこうして窮地にあるのだ。始祖竜殿が大人しくしていられるわけがないだろうさ」


 あ? みたいな気分になったけど、とりあえずサーリャだった。ウザいヤツだってことを思い出させてくれる反応を見せてくれやがった。


「な、なぁっ!? いきなりなんですかっ!! いきなりそんな妙なことをっ!?」


「はっはっは。だから私は王都での顛末を知っていてな。今回も、さぞ素晴らしい活躍を見せてくれるのだろうな、うむ」


「だ、だから、私とノーラはそんなんじゃ……っ!! 無いですからねっ!! ノーラは来てくれると思いますけど、そんなんじゃありませんから、そんなんじゃっ!!」


 私の感想としては、まぁそうだろうなって感じだった。


 アイツはコイツのことが好きだしね。そりゃ来るだろうさ。今頃、死ぬほどワタワタして、娘さん娘さんってほざいているだろうさ。


 にしても……アレね。コイツもなんかワタワタしてるけど。なんかねぇ、本当ねぇ。ムカつく。しっぽが勝手に動くぐらいにはムカつく。


「い、痛ったぁ!? ちょっとラナっ!? しっぽで頭を殴られたんだけどっ!? なによいきなりっ!!」


「……ふん。うっさい。黙ってなさいよ」


 サーリャがにらみつけてくるけど、私は視線をそらしておく。別に殴るつもりなんか無かったし。本当しっぽが勝手に動いただけだし。文句なんて言われる筋合い無いし。


 それにしても……ふん。


 私はサーリャの顔を見る。なんかさぁ。なんか嫌な予感がするのよねぇ。


 サーリャがノーラになれなれしく接しなくなった。そんなことがあって、正直私は安心っていうかそんな気分でいたんだけどさ。


 なんか違ってきたような気がする。


 アイツがサーリャと話し合った後からかしらね? 最近、ちょっと違う気がする。なれなれしく接しないのは変わらないんだけどさ、なんか考えてる気がする。よからぬことをなんか考えているような。


「……あの、一つお聞きしたことがあるのですが、良いでしょうか?」


 ちょっと場が静かになったと思ったらだった。


 大きいヤツへかもっと大きいヤツへか。分からないけど、サーリャがそんなことを言った。大きいヤツは笑顔で頷いた。


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