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第23話:俺と、明日に向けて(2)

「……あのー、これからの予定などは決まっているのですか?」


 質問タイムは終わったぽいので、俺の疑問をぶつけさせてもらうのでした。異世界産のドラゴンが野にあふれている現状ですが、ハルベイユ侯領の軍勢はどうするのかなと。撤退するとかとなれば、娘さんとラナが合流してませんし。一体でもここに残る決意ではありますが。


 引き続きです。ハイゼさんが俺の疑問に口を開いて下さいました。


「ハルベイユ閣下は撤退するしかないとされている。この異常事態において、昼間の被害もいまだに把握しきれんものがあるからな。とにかくドラゴンどもから狙われずにすむ所までは退く必要があると。ただ……」


「た、ただ?」


「体制派の本隊、メルジアナ閣下らだけでも救出出来ないかと考えてもおられる。ここで閣下らをドラゴンども毒牙にかけては、何のためにここまで戦ってきたのかも分からなくなる。焼き殺された者たちも浮かばれんとな」


 俺はちょっと安堵することになりました。一体じゃあさすがに心細いと言うか頼りなさすぎるというか。みなさんが一緒なら心強いなって。しかし、救出?


「あちらはそんな苦境にあるのですか?」


「我々はこたびの災厄の外周部にいたようなものらしい。だが、向こうはどうにも中心近くで猛威を受けることになってしまったようでな」


「ちゅ、中心でですか?」


「ドラゴンどもが発生したそのほど近くと言うかな。どうにもドラゴンどもは異界のいずれかで発生したらしく、近縁におられた閣下たちはと言うことだ」


「異界ですか。まるで黒竜の時みたいですが……いや、それよりもご無事なんでしょうか?」


 そこが非常に気にかかるところでした。わりとさばける程度の実力ではありましたが、魔術を扱うドラゴンなんてそりゃ脅威で間違いないですし。そんなものの渦中にあったとなっては、ちょっと安否に関して不安に思わざるを得ないのですが。


 ハイゼさんも同様の思いを抱かれておられるのか。「ふむ」と悩ましげに息を吐かれます。


「そう信じたいところだ。彼らは黒竜のような存在とすでに戦っていたからな。その経験を活かしてくれると信じたいが……」


 期待はしにくいって感じのハイゼさんでした。確かに数が数ですしねぇ。俺もドラゴンながらに表情を曇らせることになりますが、ここで親父さんでした。不思議な頼もしい笑顔を見せられます。


「まぁ、大丈夫だろうとも。どうやらウチの娘も向こうで力を振るってくれたようだからな」


 とりあえず時が止まったような気分でした。えーと親父さん? 


「と、当主殿っ!! 今なんとおっしゃいましたかっ!!」


 思わず詰め寄っちゃいます。俺のドラゴンボデーに気圧されながらですが、親父さんは申し訳無さそうな笑みを見せられました。


「そ、そうだな。お前は心配していただろうにな。まず知らせるべきだったろうが、そうらしい。無事戻ってきた騎竜が報告してきたのだ。体制派の方角にて、抜群の働きをみせる騎手を見たと。赤いドラゴンを騎竜としていたそうだが、この状況で活躍出来るのはな。お前はどう思う? そうは思わんか?」


 俺はすぐさま頷くことになりました。これはきっとそういうことでしょう。魔術を扱うドラゴンたちを相手して抜群の活躍を見せることが出来る騎手。これは間違いない。クライゼさんの認める名手でもあれば、黒竜を相手した経験をお持ちなのですから。赤いドラゴンという目撃証言もあれば、それは間違いなく娘さんに違いありません。


「となるとですけど……サーリャさんは、今はあちらの方々と一緒におられるのでしょうかね?」


「そうであると私は思っているがな」


「いえ、そうに違いありませんよ! これはもう……えぇ。ちょっとですね、私がんばらさせてもらいますよ、はい」


 娘さんの無事はもうこれで確定的に明らかで違いないので。あとは娘さんが無事に撤退出来るように力を尽くさせていただくだけですよ、本当。


 親父さんは力強く頷きを返してくださって、またハイゼさんもでした。いつもの笑みを俺に向けられました。


「はっはっは。やる気があればけっこうなことだな。ドラゴンどもを指して、クライゼなどは案外手ぬるいなどほざいていたが。どうだ? お前もそう思うか?」


「私の感覚でもそうです。一対一であればまず負けません」


「慎重なお前がそう言うならばそうなのだろうな。案外なんとかなるやもしれんが……そちらの御仁はどうだ? アヴァランテ殿にはご協力を願えはするのか?」


 確かにそれは気になるところでした。俺はアヴァランテさんに目を移します。この方が強力なドラゴンさんであることは日中に見知ったことです。この黒竜のお孫さんが手を貸して頂けたらっていうのは当然俺も願うところで。


『あ、あのー……アヴァランテさんには今後の予定などはおありですか?』


 黒竜と同じく人間っぽさのあるアヴァランテさんですが、首をかしげるなんて仕草を見せられました。


『予定? なんだいきなり?』


『えーとですね、味方の救出のために貴女の同胞たちと戦う必要がありまして。よければそれにご協力願えればなんて思っているのですが……』


 あまり期待はしていませんでした。一度は俺に疑問をぶつけるために助けてくれたアヴァランテさんです。でも、今回はなぁ。引き受けて下さるだけの理由があるのかって話で。断られる公算の方が高いのは間違いないだろうなぁ。


 まぁ、まず断られるのは規定路線ということで。その上で交渉かな。娘さんたちを救出するためにも、このドラゴンさんの力は是非お借りしたいし。何かないかねぇ。リバーシとかお好きだったら、戦えるドラゴンはけっこう身近に多いのだけど。


『分かった。請負おう』

 

 で、これがアヴァランテさんの返答でした。


 うーん、なるほど。なんで? 俺は思わず問いかけます。


『え、えーと、良いのですか? 同胞の方々と戦って欲しいって話なんですが』


『良い。むしろやる気になる。祖父を始めとしてバカ者ばかりだ。自らの死に際に満足出来ず、世界の垣根までを超えて人類に迷惑をかけようとしてな』


『は、はぁ。よく分かりませんが、あの、ありがとうございます。非常に助かります』


『お礼などはいい。すでに受け取っている。バカな祖父ではあったが、その祖父に満足する死を与えてくれた。それで十分以上だ』


 なんか色々と事情があるんだろうなって感じでしたが、この辺りは落ち着いた時にでも聞けたらって感じかな。


 とにかくまぁ、戦力的には現状整えられるだけ整ったと言えるでしょう。あとは明日、俺はその一員として全力を尽くすだけです。


 しかしまぁ、どうですかねぇ。


 俺は思わず星のまたたく夜空を見上げます。娘さんもラナも無事で元気にされているんでしょうけどね。今、どこで何をされているのかって、それはやっぱり気になるよなぁ。


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