終話:【ラナ視点】そこが大事よ
うざいことに、うざいのに連れ去られちゃって。
腹が立ったものだったけどさ。でも、これは案外良かったのかもねぇ。
「ら、ラナっ! 聞いたよね? あれ何っ!? ノーラがもう何かおかしかったよね!?」
連れ去られたどこかの木の下で、サーリャはうっとうしい勢いでワタワタしていた。理由はまぁ、アレよね。ノーラがいきなり言葉にしたアレ。
俺は好きですけどなんて。
私はため息だった。絶対に伝える気は無いなんて言ってたクセにアイツはさ。口にしやがったのよねぇ。本当、腹立つ。言わないって言ってたのに。首を噛みちぎってやりたいぐらいに、本当のホントに腹が立つ。
でも、それはそれ。
言葉にしやがったのはもうどうしようも無いし。だから今気になるのは……コイツよね。
「ねぇ、ラナ。聞いてる? おかしいよね? 何かノーラにあったんだよね? 絶対そういうことだよね?」
コイツは私にどんな反応をして欲しいのか。相変わらずわめいているけど、ちょうど良い機会よね。尋ねてしまう良い機会。
「そんなことよりさ、ちょっといい?」
私にも話をさせろってことだけど、サーリャは激しく噛みついてきやがって。
「そ、そんなことっ!? い、いやいや、めちゃくちゃ大事でしょっ!!」
思わず『ふん』だった。そんなこと、私にとってはどうでもいいっつーの。そんなの、もう知ってたことだし。
私にとって大事なのはアンタよね、アンタ。いや、サーリャが大事ってわけじゃ当然ないんだけど。
「アンタはどう思ったのよ?」
聞いてやった。
サーリャはちっさい顔のおっきな目をまん丸にして。
「え? わ、私?」
「そうよ。アンタはどうなのよ? アイツにあんなこと言われてさ、アンタはどう思ったの? アイツについてどう思ったの?」
これが大事だって、私はそう思ってんだけどさ。
サーリャはろくな答えを返してこなかった。
「そ、そんなの、私は……私は……その……」
動揺ばっかりって感じかしらね? そんなことをおろおろと繰り返すばっかりで。
時間ばかりがただ流れていった。