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第19話:俺と、第二次作戦会議(2)

 もうごまかしようが無いと思っての判断でしたが、独断で先走った感じも否めませんし。


 責められることがあっても当然として、謝罪をさせて頂いたのです。


 俺の疑似土下座に対し、最初に応じられたのはアレクシアさんでした。


「えー、とりあえず頭を上げられたらと思いますが。ノーラが進んで暴露したとも思えませんが、サーリャさんに詰問でもされましたか?」


「はい。何でも怪しいところがそこかしこにあったとかで。白状しろと迫られまして、つい」


「そうでしたか。では、謝罪される必要は無いような気が。すでにサーリャさんは気づかれていたようなのですから。そこに責任があるとすれば、それは私たちで背負うべきものかと」


「ですが、確証を与えてしまう必要はあったかなぁと反省しておりまして」


「確証ですか。まぁ、どうでしょう? この手の話は疑われた時点で終わりな感はありますが。アルベールさんはどう思われますか?」


 意見を請われたアルベールさんです。この方は、「まぁ」と平然と頷かれました。


「別に、大差は無いような気はするはなぁ。疑われた時点で、サーリャ殿の行動に影響を及ぼすことは間違いないだろうし。だから、別に気にするなよ。少なくとも、そんな頭を下げる必要があることじゃないからな」


 これに、アレクシアさんも同意の頷きを見せられて。


 迂闊なことをしてくれたと。そう怒られることも十分に想定していましたので。お二人の寛容な態度には、正直安堵しかなく。


「そうおっしゃって頂けるとありがたい限りでして。ただ……お二人とも、企みがバレたことについては特に驚かれていないのですねぇ」


 安堵と共に、その点が不思議だったりするのでした。俺なんて、親父さんが絡んでいるだろと迫られた時には心臓がドッテンバッタンしたものでしたが。


 お二人は、何でもないような表情でそれぞれに応じられました。


「まぁ、謀が密であるのは謀っている間だけのことですからねぇ」


「動き出せばまぁなぁ。そりゃバレるもんだろうさ」


 なんか、この二人が大貴族の子息子女であることを俺は思い出させられるのでした。陰謀だとかを遠い世界のものとして生きてきた俺と、多分身近なものとして生きてきたこの二人。謀りごとに関する感覚に、大きな差のようなものがあるような。


 ただ、この二人にしても、バレたことが無影響ということはあり得ないらしく。アルベールさんは「ふむ」と軽く眉根を寄せられます。


「しかしまぁ、バレたか。だったら、この集まりもサーリャ殿には密談のそれだと思われているのかな?」


「そこはあの、アルベールさんは巻き込まれただけに思われているようで。別件の集まりと思われているのかも?」


「へぇ。それはまた朗報……か? 恋心を利用されている他愛の無い男か、使えるものを全て利用するガツガツした男か。どちらの方が点数は稼げるもんだろうな?」


「さ、さて。そこは何とも難しいところですが」


「まぁ、その点はともかくとしても、今後の活動も考えないとかな。アレクシアさんはどう思われますか?」


 意見を求められてのアレクシアさんです。この方も、バレたことには悩ましいものを感じおられるようで。アゴに拳を当てながらに口を開かれます。


「そうですね。そこはやはり、サーリャさんが何を思われたのか次第かと。今回の企みを知って、結婚などしてたまるものかと頑なになられてしまったのか、それとも周囲にこれほどまで望まれていることを知って、何か心動くものがあったのかどうか。その辺りは、ノーラ。何か耳にしたものはありませんか?」


 俺は問われて思い出します。


 昨日は色々と耳にしましたし、目にもしましたが。そうですね、あの時の娘さんの感じはです。


「頑なになられた感じはありませんでした。ラウの当主殿の期待をあらためて実感されて、少ししんどそうでしたが」


「ふーむ。そうでしたか、しんどそうでしたか。やはりサーリャさんは、ヒース様の期待に応えたいとは思っていらっしゃったのですね」


「はい。まさしくそんな感じで」


「ともかく、頑なになられていないのならば、一度引いてということも必要は無いでしょう。サーリャさんが男性に興味を持てるよう、男性と一緒になりたくなれるように活動していく。それでいいのでは?」


 この提案に、アルベールさんが頷きを見せられます。


「今まで通りってことだな。俺の目的からしても、それ以外に選択肢は無いし。何とか男に興味を持ってもらって、それは俺でってな」


 どうやら、こういうことになったようでした。


 バレてしまっても今まで通りということで。娘さんが男性に興味を持てるようにということですが……あっと、そう言えば、その点についてお伝えしなければならないことがありましたね。


「あの、どうやらですが、サーリャさんは男性に興味は大いにおありのようです」


 何のために昨日の集まりを催したかを思えば、かなり衝撃的な情報に間違いなくて。


 お二人とも、大きく目を丸くされたのでした。


「は? サーリャ殿が? それは確かなのか?」


 アルベールさんの驚きの問いかけに、俺は頷きを見せます。


「はい。本人からお聞きしましたので。昨日の集まりも、本人にとってはかなり照れくさいものだったようで」


「そ、そんな風には見えなかったが、へ、へぇ。そうだったのか。それは何とも意外な」


 アレクシアさんは、驚きの表情のままにアルベールさんに相槌を打たれます。

 

「そうですね、私も意外以外の言葉がありませんが……あの、ノーラ? 男性に興味がおありということは、その結婚の方も?」


「拒否感があるような感じは見受けられませんでしたが」


「ふむ。男性に興味があり、結婚する気があり、ヒース様の期待に応えたい気持ちもあり……えー、何故でしょうか? サーリャさんが何故ヒース様に反発して、結婚しようとされていないのか。それが分からなくなってきましたが」


 アレクシアさんは俺と同じ疑問に直面されているようでした。ですよねぇ。アルベールさんという方もいらっしゃれば、何故? ってそう思われますよね。


 そして返答は昨日聞いた通りになりまして。


「分からないだそうです」


「分からない?」


「本人はそんな感じだそうで」


「ふーむ。それは難儀そうですね。本人はもちろん私たちも」


 アルベールさんが難しい声で同意の声を上げられます。


「まったくなぁ。本人すら分からないものを俺たちがっていうのはな。どうにも対処しようがないが……ただ、大きく前進した感じあるな。そうか、サーリャ殿は男に興味がおありなのか」


 どうしようも無い点は置いておいてって感じでしょうか。アルベールさんは力強い頷きを見せられます。




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