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第4話:俺と、無策なのですがうーむ(2)

 「そりゃそうだよ。ノーラと話せるだけでも嬉しいのに、今度はラナなんだよ? こんな幸せなことって無いよね?」


「まぁ、ですかねー?」


「あはは、ですよー? アルバもさ、どうかな? 話そうって思ってくれたりしないかな?」


 くだんのアルバはさっぱりその点に興味は無く。サーバスさんがクライゼさんの用事でいらっしゃらないので、一体で丸くなって午睡を楽しんでいますが、それはともかく。


 うーむ、でした。


 娘さんの無邪気な笑みを見つめているとですね、俺は『うーん』とならざるを得ないわけで。


 やっぱ、こうだよなぁ。


 娘さんの興味がなへんにあるかって話なのですが。おそらくと言いますか間違いなくドラゴンだよなぁ。


 あの家のあの人がすっごくかっこ良かったのきゃーっ! みたいなノリとは無縁も無縁でして。興味があるのはもっぱらドラゴンのことばかり。後はまぁ、アレクシアさんと市中巡りをされているみたいで、そのことについて話をしてくれるのですが本当そのぐらいかなぁ。


 親父さんが嘆いていましたが、本当男に興味が無いっぽいですよね。


 どうなんでしょう? 青春なんて俺にとっての異界のセンテンスが存在するようにです。娘さんの年頃であれば、もうちょっとこう男性に興味があっても良いものだと思うのですがねぇ。


 まぁ、アレクシアさんも興味は無さそうですし、一定数こういったタイプの人は存在するのでしょうが。しかしね、困っちゃいますね。親父さんからのお願いのことを考えますとです。男性に興味が無い人に、婿取りだとか嫁入りだとか。その気にさせるにはどうすればいいのやらで。


「……えーと、ノーラ?」


 娘さんが不思議そうに首を傾げておられますが、おっとっと。また思考の迷宮にはまりこんで、娘さんの不審の思いを招いていたようで。


「あーと、アルバの話ですよね。アルバはそうですねー、話すよりは寝るのが好きですので。ちょっと難しいかもですね」


「なるほど。でも、いつか話せたらなぁ。ラナみたいにね。本当ラナと話せてすごく嬉しかったしね」


 そう口にされて、娘さんは愛おしげにラナのアゴ裏をさすられるのですが……この表情をドラゴンでは無く人間の男性に向けて頂けたらなぁって、それが親父さんの願いなのでしょうが。


 うーむ。想像も出来ないなぁ。式典前までには何とかって話でしたが、式典までもう一週間も無く。この短期間ではちょっとって感じですよねー、正直ねー。


 となるとです。


 やはりここは娘さんの責任感に訴えかける形になるのでしょうか? 当主の一人娘として、後継ぎのことをしっかり考えて下さいって。でも、それは親父さんがすでに実行している手管だしなぁ。親父さんに無理だったことを俺がって、そんなのねぇ?


 ではさて、どうするか?


 やはり考えてこんでしまいます。責任感に訴えるのはナシ。そもそもですが、責任感に訴えるのはあまりやりたく無いですしねぇ。娘さんには出来れば、男性に興味を持って頂いて、その上で好きな方と一緒になって欲しいですし……うん。そうですね、やっぱり娘さんが進んでっていうのが一番ですよね。


 ちょっと俺の進むべき方向が見えてきたような気がしました。


 要はアレです。娘さんにその気になって頂ければ良いのです。恋愛して、幸せな家庭を作りたいって、そう思って頂ければ。


 そのために必要なのは……まぁ、男ですかねぇ。一緒にいたいと、一緒にこれからを生きていきたいと、そう思える男性が現れてくれれば。


 そのアテは正直ありました。


 アルベール・ギュネイ。俺が前世で得られなかったものの全てを嫌味無く兼ね備えておられる方です。


 告白は断られてしまったのですがね。アルベールさんの真摯な告白を、娘さんは何を考えてか無下にされてしまって。


 でもです。アルベールさんの魅力がちゃんと伝わっていればって、俺はそう思っていて。実際のところ、娘さんは俺ほどにはアルベールさんと濃厚な時間を過ごしてはいなくて。


 しっかりと魅力が伝わるような時間を作ることが出来れば、きっと娘さんもですよね。あるんじゃないかな? いや、あるっしょ絶対。男の俺が惚れこむぐらいなのですから。娘さんもきっと……うん、ある。絶対、ある。


『よし』


 一つ呟いて、ラナに不審の目で見られて。ですが、ラナにかまっている場合では無く。


 思考を走らせます。


 アルベールさんの魅力を分かってもらって、娘さんにその気になってもらう。これが俺の基本方針になりそうです。アルベールさんの魅力が伝わるような場を作ってって感じになるでしょうが、それにはもちろんアルベールさんの協力が必要になるだろうなぁ。


 そのためにはアルベールさんに連絡を取る必要があって。そして、そのためにはって、うん。そうだよな。俺の知らない娘さんについて知っておられる方でしょうし。この方の協力は絶対に必要になるでしょう。


「すいません。サーリャさんには聞こえないように失礼しますので、どうかお静かに」


 俺が人間の言葉を使う時には、声帯を震わしているわけでは無く、風の魔術で声帯のような働きを再現しているだけですので。なので、こんな芸当も出来るのでした。


 アレクシアさんの耳元でだけ、ひそかに声を発生させて。娘さん同様、ラナの頭を愛おしげになでられていたアレクシアさんでしたが、不意の異変に大きく目を見張られます。ただ、俺のお願いを遵守して頂けたようで、驚きを声にされることは無く。


 内密にということも察して頂けたようでした。俺と目を合わせることもされず、引き続きラナの頭を撫でられていて。


「ご配慮いただきありがとうございます。サーリャさんには内密のお願いがありまして。後でお時間頂いてもよろしいでしょうか?」


 親父さんの頼みから、俺の考えまで。


 聞いて頂いた上でご意見も頂きたいので、このような尋ねかけとなりました。


 そしてのご返答でした。


 アレクシアさんはひそかに頷きを見せられて。何か一大事だと思われているのかもしれません。その目つきは真剣そのもので、ちょっと申し訳ないようなことをしたような感じがありますが、まぁ一大事なのは間違いないでしょうからね。娘さんにとっても親父さんにとっても。


 とにかく、状況を進めましょうか。


 上手くいくアテなんかありませんが。それでも上手くいくと信じて、能動的に動いていきましょう。




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