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俺と、ドラゴン冬の陣(5)


 言葉を学びたいらしいサーバスさん。


 そのことをダシにして、サーバスさんとリバーシがしたいラナ。


 そんな事情はどうでも良くて、サーバスさんとリバーシがしたいその他大勢。


 とにもかくにも、サーバスさん大人気。


 この現状受けて、どうしたらいいのか? とラナは俺に問いかけてきたのですが。皆でサーバスさんと遊ぶにはどうしたらいいのか? って、そういう疑問なのだと思いますが。


『順番に遊べばいいんじゃないの?』


 素直に思ったことを口にしました。サーバスさんにとっては手間かもですが、これで全員が遊べるわけで。それですむ話のように俺には思えましたが。


『違う、違う。そこじゃなくって。他の連中がサーバスと遊べないんじゃないかって話』


『はい?』


『ノーラを自由に使うためにって、サーバスは私と戦ってくれるわけじゃない?』


 あー、なるほど。サーバスさんには他のドラゴンと戦う動機なんてないじゃないって話らしい。他の連中がサーバスさんと戦えるためには、どうしたらいいのか。そこが俺への尋ねかけの本質だったようですが、でもそんなのさ。


『俺を自由に使いたければ、他のドラゴンたちと戦った上で、私と戦って勝て。それでいいんじゃ?』


 一応、主導権はラナが握ってるんだし。横暴極まりないけど、別にこれで良いような。


 ラナは『なるほど』と頷いてきました。ですが、何か思うところがあるらしく、軽く首をかしげていますが。


『確かにね。それですむような気はするけど……でもヒマよね?』


『ヒマ?』


『サーバスが勝負してる間がさ』


 まぁ、そうなのかな? でも、そんなことは。


『今まで通り、適当に遊んでいればいいじゃん』


 それだけの話のような。ですが、ところがでした。


『いや』


『はい?』


『他の連中とは散々遊んだから。だから、いや』


 こんなことをのたまってきました。そして、これはラナばかりの意見では無いらしい。同調して頷きを見せるドラゴンはけっこういたのでした。


 ほうほう。確かに、もう三、四時間は遊んでるもんね。昼間ぐらいに始まったはずですが、すでに斜陽が始まってるぐらいだし。


 飽きてきたのも納得の話で。だからこそサーバスさんとの対戦という刺激を求めていたのかもしれなかった。しかし、贅沢だね、君ら。俺はヒマを持て余して、リバーシ欲に満ち溢れているというのに。なんかもう、うらやましいなぁ。って言うか、素直に妬ましい……


『とにかく、何か考えてよ。なんかさ、サーバスが戦っている間にも残された連中が楽しめるようなヤツ。ヒマなのは本当いやだし』


 で、こんな俺への訴えになりました。


 えーと、要約するとですね、私はサーバスと遊びたいけど、他の仲間にもサーバスさんとは遊ばせて上げたくて。でも、その間ヒマなのもいやだから、何か解決策を考えろや。こうなるのではないでしょうか? 


 んなこた知るか。そう返してやりたい俺でしたが、ラナの暴力性は恐れるのに十分なので。仕方ない。解決策ね。一応考えてやるとしますか。


 とにかく、サーバスさんと対局出来ない間のヒマつぶしを考えてやればいいわけだ。


 リバーシにはどうやら飽き気味。となると、別の娯楽を提案するのか、それともリバーシに別の魅力を加えてみるか……ふーむ。前者はなぁ。俺たちドラゴンでも出来て、なおかつ即席でってなるとねぇ。リバーシを超えるものはなかなか思いつけないような。


 となると後者かな? リバーシを再び楽しめるように出来る何かを考える。これはこれで難問でしたが。リバーシのルールをどうにかするってのは、俺の頭じゃあ無理。となると、リバーシの外側から魅力を加える必要がありますが……そう言えばですが、リバーシってプロとかあるんでしたっけ? ……ふむ。これでいけるか?


『リーグ戦とかどう?』


 これがベターな提案になるんじゃないかな?


 ラナは『ん?』と首をかしげてきます。


『リーグ戦? なにそれ?』


『総当たりって言ったらいいかな? とにかく、サーバスさんも含めて全員が全員と戦ってみる感じ。それで順位を決めるわけ』


『順位?』


『そう、順位。誰が一番強いかってさ。面白そうでしょ?』


 スポーツでも何でも、順位っていうのは勝負事を盛り上げるために必須の要素じゃないでしょうか。


 同じリバーシをやるにしても、順位という概念を導入さえすればって話でした。大分、趣が変わってくると言いますか、十分なヒマつぶしになり得ると俺は思ったのですが。 サーバスさんとの一局じゃなくてもですね、この一局に順位がかかっていると思えれば、なかなか楽しめるんじゃないかな?


『……良い』


 そして、ラナでした。期待感をにじませた肯定の呟き。俺の顔を笑顔のような表情で見つめて、弾むような頷きを見せてきます。


『良い! 良いじゃん、それ! すっごく楽しそう! 誰が一番か決めるんだよね? それで一番になったら、ノーラを好きに出来るって感じで! 良いじゃん、これで最高じゃん!』


 不覚にもでした。不覚にも、ラナのことを久しぶりにかわいいと思ってしまいましたが……そ、それはともかく。


 ツッコミどころが二点ほどあるような。


 まず一点。賞品をつけるのはいいけどさ、その賞品にどれほどの訴求力があるのやらでした。求めてるの、サーバスさんだけだよね? 俺をわざわざリーグ戦の賞品にすえる意味ある?


『……リーグ戦とやらは望むところだが、ノーラを好きに出来る? なんだそれは?』


 早速、困惑の声が上がりました。


 リバーシさんである。大きく首をかしげておられました。


『なんだそれって、そのままの意味よ。ノーラを好きに出来るの。良いでしょ?』


 さも当然といった感じのラナの返答でしたが、リバーシさんは当然の如く反応に迷われたようで。


『良いでしょと言われても困るが……何が良いんだ?』


『何がって、そりゃ遊べるのよ? 飛んでもらってさ、それを狙って噛み付いたりするの。すっごく楽しいから』


 なおさら困らせてしまいそうな回答でした。本当、何が良いんだ? って感じ。そんなのを楽しめるのは、間違いなくラナぐらいのものだろうね。


 と、俺は思ったのですが。


『……ほう。そうか』


 なんかもう良く分かりませんが、リバーシさんは目を輝かせるのでした。えーと、何で? 周囲を見渡すと、他のドラゴンも目を輝かせていますが……え、何で? 本当、何で? わけ分かんないんですけど?


 え、えーと、それでもあえて察するとである。


 生まれて初めて、リバーシという娯楽の味を覚えた彼らである。楽しいと言われて、俺を追い回すのもリバーシのようなものなのかって、思わず期待してしまったのでは無いだろうか。


 ともあれ、なんかヤベェな。皆が皆、目をキラキラさせて俺を見つめてきている。猛獣の檻に入れられる感覚って、こんななんだろうなぁ。怖い。冷や汗が止まりません。この中の誰が一位になっても、俺が無事ですむことは無いことでしょう。


 ま、まぁ、俺の悲観すべき将来はともかくとして。


 二点目については、ちゃんと俺が口にした方がいいかな? サーバスさんにとって、不利になりかねない部分ですし。


 そう俺が思ったところで。


『……一位にならないと、ノーラに頼み事は出来ないの?』


 俺が言わずともでした。サーバスさんが疑問の声を上げられました。それはまぁ、当然のことで。ラナに勝てばよかった話が、気がつけば一位になったらってハードルが上がってるし。


『いやなの? 別にいいでしょ。私に勝てるんだったら、当然一位にだってなれるんだし』


 ラナの返答はこんなとなりました。


 うぬぼれってわけじゃないんだろうね。すでに皆と遊び尽くして、その実力のいかんは理解し切っているだろうから。


 で、サーバスさんにも同じ思いはあったのか。一位になれる自信が彼女にもあったのか。


『……分かった。それでいい』


 返答は是でした。


 ラナはドラゴンながらにニヤリと笑みを浮かべます。


『よし。じゃあ、やろっか。ノーラを自由にする権利は、私が絶対手に入れるから』


 良く分からんことを言いながらの宣戦布告でした。君、常に俺の生殺与奪権を握っているようなものでしょ。これ以上、俺をどうしたいのか。非常に気になるところでしたが、ともあれ。


『……絶対一位になるから』


 サーバスさんの口から決意の言葉がもれて。


 リーグ戦が始まるようです。


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