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俺と、ドラゴン冬の陣(4)

 サーバスさんはどうにも人間と交流したいようで。

 

 その上で、言葉が覚えたいのかな? どうやって覚えたのかという問いかけがありまして、俺は聞いて覚えたと伝えまして。


『……聞いて覚えるのは、私にも難しいかも』


 サーバスさんはそんな結論に至ったらしい。そしてでした。俺の目をじっと見つめてこられます。


『ノーラ。ちょっとお願いしたいことがあるんだけど』


『は、はい? えぇ、もちろん。サーバスさんのお願いでしたら』


『ありがとう。じゃあ私にも人間の言葉を……』


 教えて。


 きっとそう続いたのだと思うのですが、サーバスさんは目を丸くされて言葉を失うのでした。


 何故かと言って、それは俺の首からバキィ!! とか粉砕音が響いたからで。


『おぅふ』


 首に激痛が走り、俺は叫ぶことも出来ずに奇妙なうめき声を上げることになりましたが。


 下手人なんて決まっていました。ラナである。ラナがその長い首を振り回して、俺の首をしたたかに痛打してきたのですが……お前はキリンか。なに器用な傷害行為にはげんできやがったのですか。首の骨が一つ、二つ減ってしまいそうなぐらいに痛かったのですが……ぬ、ぬおー、死ぬぅー。


『ら、ラナ?』


 痛みに耐えながらに、その凶行の動機を尋ねかけたつもりでした。だが、ラナは俺のことなんて全く気にしていないようでして。


『……サーバスさぁ、最近妙にノーラと仲良くしてくれてるじゃないの』


 お前は俺の何なんだ。そうツッコミたくなるような、ラナの妙な声かけでした。サーバスさんはもちろん当惑されているようで。


『……えぇと……そう?』


 俺に顔を向けての尋ねかけでした。えー、どうでしょう? 顔を合わせる機会は多いと思いますが、以前と変わらない関係だとは思いますが……


『そう? じゃない! そうなの!』


 で、ラナさんは私の言葉が正しいんじゃ! と断言されます。お前、本当なんなの? 本格的に頭がどうにかなっちゃったの? 俺が疑念を抱く中、ラナはサーバスさんをにらみつける。


『ダメだからね?』


 そしての否定の言葉。何が? ラナは変わらずサーバスさんをにらみつけつつ、言葉を続けます。


『頼み事をしたってダメ。ノーラは私の物みたいなもんなんだから』


 なんか、妙なことを口走りましたが。


 ノーラは私の物? ……なんか独占欲の発露みたいなものを感じますが……ま、まさか? や、やだ、まさかですか? ラナったら俺のことをそんな風に……って、んなわけないでしょうな。


 そのラナさんですが、痛みにもだえ続ける俺には一瞥すらして来ないし。


 サーバスさんのことを、キラキラした眼差しで見つめています。


『ノーラに頼み事をしたかったらね……私に勝ってからにしなさいよね。分かった?』


 そういうことでしたか。


 ラナはサーバスさんに恋い焦がれていた筆頭だったもんね。対局を挑んでは断られて、何やらちょっと不満げでしたし。俺とサーバスさんの会話を小耳にはさんで、対局のダシにしてやろうと考えたらしい。本当、したたかな性格しているなぁ、コイツ。


 しかし、それはアカンでしょ。俺はサーバスさんの頼みだったら、進んで聞き届けたいし。


『サーバスさん、コイツの話は聞かなくていいからね? 別に対局しなくたって俺はぐびゃ』


 果たして、俺の首はどうなってしまったのか。レントゲンがこの世界にあったとして、絶対に見たくは無かっただろうなぁ。前回の再現だった。ラナのネックアタック。一方の俺のネックはメシャ! っとか、かわいそうな音を立ててしまいまして。


 おいおいおい。


 コイツ、俺を殺す気かよ。文句の一つも言いたい俺でしたが、首の激痛に付き合うのが精一杯で何ともかんとも。


『とにかく、ノーラをこき使いたいんだったら、私に勝ってからにしろってこと。サーバス、どうする?』


 これを受けてのサーバスさんでした。


 俺を憐れむように見つめた後に、一つ頷きを見せられました。


『……分かった。ノーラにはお願いしたいことがあるから。そのためにも、ノーラの首をこれ以上ぐにゃんぐにゃんにするわけにはいかないから』


 自分がためらっている間に、俺の首が頼み事が出来ないぐらいの惨状に陥る恐れがある。それを心配しての、サーバスさんの決断のようでした。


 す、すみませんけどね、サーバスさん。俺も、一応騎竜でもあれば、首の自由は出来る限り確保しておきたいので。これ以上はラナが恐ろしくて発言したくないので、ただただ願わさせて頂きます。


 がんばって下さい。ラナをぎっちょんぎちょんにやっつけてですね、俺が手助け出来るような状況を作って下さい。本当、ぎっちょんぎちょんにやっつけてくれていいですから。むしろ、それが望みですから。


 ということで、対戦の始まりですかね?


 そう俺は思ったのですが。


『ちょっと待て』


 ここで横槍でした。


 発言の主は最初に文句を言ってきた、あのドラゴンでした。結果的には、リバーシ文化興隆の原因となったドラゴンさんでして……リバーシさんとでも呼ばせてもらいましょうかね、えぇ。


 そのリバーシさんですが、一体何なのですかね? 当人がリバーシにドハマリしていることもあれば、今さら文句なんて、そんなことは無いでしょうけど。


『サーバスにはな、俺の方が先に挑んでいたんだ。俺の方が先に戦えてもいいはずだ』


 そしてのそんな文句でした。ふーむ?


 ずるいぞって、ことらしいですね。ラナとサーバスさんの間にあるやりとりなんてどうでもよければ、とにかく早い者勝ちだろって、そういう主張のようで。


 似たような声は次々に上がりました。


 サーバスと戦うのは俺だ、私だって。本当、サーバスさん人気者だったようで。竜舎中から声が上がりました。


 ラナさん、眉間にシワを寄せて苦い顔をされるのでした。


 ウザイ邪魔が入りやがった。ラナのことなので、そんな胸中にあるのかと俺は思ったのですが。しかし、どうにも予想とは違うようでして。


『……なるほど。アンタらの気持ち。確かに分かる』


 意外や意外。理解を示したのでした。サーバスさんに恋い焦がれた一体としてだろうか。声を上げてきたドラゴンたちに、共感せざるを得なかったらしい。コイツ、身内には優しかったりするからなぁ。同好の士の申し出とあって、無下には扱えなかったようで。


『ノーラ』


 そして俺の名を呼んでくるのでした。


『なんかない? こんな感じなんだけど』


 この状況を解決するアイデアを求めてきているようで。皆がサーバスさんとリバーシを楽しめるようなアイデアなのでしょうが……その前に、謝罪が先じゃないのかなぁ。本当、二言、三言謝って欲しいのですが、もちろん怖いので口にはしませんが。


 さて、どうしましょうか?


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