そのままで
観覧車から降りた3人。
結局和人の告白は
アキが適当にはぐらかし
返事は保留という形で納めておいた。
「ちょっと、トイレ行ってくる」
アキは少し青ざめた顔で
和人にそう告げ
トイレのほうに歩いて行く。
トイレに入るとアキは
鏡の前で何度も顔を洗う。
出しっぱなしの水道の音が
トイレの中に響いている。
びしょぬれの顔を鏡で見るアキ。
「おい、ユウ」
鏡に向かって問いかけるアキ。
「このままではだめだよな?」
なおも鏡に向って問いかける。
「え?
お兄ちゃんどうしたの?」
トイレの中で
どこからともなく響いてくるユウの声。
「俺、少しわかってきたんだよ。
俺が今どういう状態なのかが」
すると鏡の中に写るアキの顔が
にっこりアキに微笑んだ。
「お兄ちゃん。このままでいいじゃない。
このままでいいんだよ。
私の願いはこのままお兄ちゃんと
一緒に居れたら、、、」
鏡の中のユウがにっこりほほ笑む。
「だめだ!!」
しかしアキはユウの声を
振り切るように叫ぶ。
「だめなんだ!ダメなんだよ、、、」
下を向いて唇を噛みめるアキ。
「俺さ、、、だんだんと思いだしてきたんだ。
あの事」
「だめ!思い出しちゃ!!
だめえ!!」
ユウが叫ぶ。
鏡の中のユウは
また涙を浮かべている。
「おいユウ、、、連れて行け。
あの場所へ、、、
連れていくんだ。
そしてそこで
すべて終わりにしよう」
泣き崩れるユウ。
悲しみに暮れるユウを
アキはやさしい目で見つめ続ける。
「いいんだ、、、おまえが幸せになってくれたら、、、」
アキは真正面を向き直しじっと鏡を見つめる。
「たとえ、俺が消えてなくなったとしても
亜樹が幸せになってくれたらそれでいい」
そして
トイレを出たアキは和人を呼びこう告げた。
「おい、、、行こう、和人。
あの場所に」
ただならぬ雰囲気のアキ。
月が出てきた黄昏時
アキは静かに立ちつくしていた。
満月の夜だった。