アキはユウでユウはアキ
夕日が落ち夜が始まる時
観覧車は頂上に着いた。
今まで見えていた景色が
光の点に変わり始める。
それと同時に
ゴンドラの窓に
はっきり写るアキの姿。
ゴンドラの中の
頼りない光に包まれた
アキの姿。
アキは光の点になった風景と
自分の姿をしばらく眺めていた。
「そうだったのか、、なるほど」
自分の姿を見つめつぶやくアキ。
「おい、、、ユウ」
アキは心の中で
ユウに語りかける。
「お前は、、実体のない幽霊のままでいいのか?
本当は今すぐにでも
和人と一緒にゴンドラの中で
愛の告白を聞きたいよなあ」
アキの語りかける言葉に
ユウが反応する様子はない。
「だって俺はさあ
どう考えても邪魔だよなあ、、、
2人のデートを邪魔するだけの存在だよなあ、、、
だって、、」
アキは窓に映る自分の影を
じっと見つめる。
「俺はユウで、ユウは俺なんだろ?
全部思い出したわけじゃないけど
何となくわかったんだよ。
つまり
俺がある日突然女になったんじゃなくて
俺がユウの体を乗っ取ったんだろ?
いったいどこに行ったんだ?
俺の体は、、、ああ」
「いいのよ、、、」
窓に映る影が
しゃべりかける。
「お兄ちゃんがずっとそばにいてくれるのなら
私、一生このままでいいよ。
お兄ちゃんは何も思い出さなくていい」
窓に映る影がそっと手を差し伸べ
ユウを抱きしめる。
「ありがと、、、」
アキがつぶやく。
「ユウが俺のことを
心から思ってくれていることはわかる。
でも
事情はわからないが俺はユウの体を取ってしまった。
君の体は君のものだ。
それは返さなきゃならない。
さあ
今すぐ自分の体に帰って
和人と最高のデートを
楽しむんだ」
黙って首を振るユウ。
「それはできない」
下を向くユウ。
「できないの!
だって、私が体に戻ると、、」
ユウの悲しみを含んだ叫びが
アキの心を引き裂く。
「ユウの大切なお兄ちゃんが
この世から消えてなくなってしまう!!
それだけは、、、
それだけは、、、、できない」
ゴンドラはゆっくりと
下へと向かって降りていく。
悲しみをたたえながら。