表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

29歳の9ヶ月

はじめまして、小説というよりも、一人のベトナム人を愛した実話です。

もう29歳の中年おじさんにリーチがかかった、私の恋の体験談です。


知らないやつの色恋沙汰ほど、つまらん話もないと思いますが、ネット広告の一部だと思って、お暇な時間があるときに、見ていただけたらと思います。



1、出会い


出会いは、平成の29年、11月でした。

私はとある飲食チェーン店の店長をしており、(名ばかりですが笑)

9月の初旬に某店に移動し、2ヶ月がたった頃でした。

秋の訪れとともに、肌寒さと人恋しさが芽生え始めた頃、


彼女に出会いました。


「お店の前に誰かいる」


ふと、この日はアルバイトの面接が入っていたことを思いだし、彼女のもとへ駆け足でかけよりました。

店前での彼女は緊張と不安からか、そわそわし、私に声をかけられたと思えば、

その細い体に、長い髪、大きくて美しいその瞳を輝かせ、


「面接があるから、ここ、きました。よろしく、おねがいします。」


片言な日本語で彼女はそう答えると、

ベトナム人であることを続けて話してくれました。


「外は寒いから」


そう言って、店内でのアルバイト面接を始めると、調理を頑張りたいとのことだったので、

調理のアルバイトで雇う方向で、面接が始まりました。

はじめは日本語もよく聞き取れない様子で、話すのもままならいことから、雇うのを躊躇した私ですが、1つの共通点があったことより、採用に踏みきりました。


「お母さんと誕生日が同じだ」


私がそう話すと、彼女は嬉しそうに、少し驚きながら


「そうですか」


と頷き、採用と、次回働く日程を話し、この日はひとまずこれで終わった。



2、働き始め、彼女を知る


採用後、初の勤務があった。

彼女はベトナム人であるがゆえなのか、日本人にはいないスタイルで、首は長く、肌も白い、

なにより、目は口ほどにモノを言うとは言うが、彼女のその大きな瞳は、まさに目から声がでる勢いで、キラキラと輝いていた。


始めての調理場(キッチン)に入るやいなや、始めて見た調理器具や食材にどんどん興味を持ち始め、今までに見たことがないくらい真面目な姿勢で、彼女は真剣に仕事に向き合ってくれた。


私は初めの1週間、付きっきりで教えることになる、16時からの23時まで、マニュアルの読み方や、包丁の握りかた、洗い物にいたるまで、全て丁寧に教えた。


彼女は毎日ありがとうと言い、私の方こそと頭を下げる日々が続いた。

こんなに、優しく、健気で、真面目な人がいるものかと、女性不信とまではいかないが、女性に対して臆病な私はそう疑いつつも


出会って1ヶ月もしないうちに、

8年ほど、忘れていた感情が頭をよぎった。


「好きかもしれない」



はじめは、まさかベトナム人にとこっ恥ずかしくなりつつ、次第にそれは、本当に


好きだ


という気持ちに変わっていった。



3、アプローチ


好きになるとはどういうことか、

それは実際好きにならないとわからない感情であり、老若男女問わずそれは訪れる。


ベトナム人を好きになった私は、

店長である立場をわきまえ、慎重にいくことにした。

相談相手はただ一人、唯一の紅一点女性アルバイトである。

環境をかき乱すようなことはしてはならない。


頭の念頭にその言葉をおき、ベトナム人へのアプローチが始まった。


帰りの時間をわざと同じにして


「店長、今日は早くかえれますか?良かった」


と微笑んでくれるベトナム人の彼女に私は、


「日本語の勉強がてら、ご飯でも食べないか?」


そう言った私は緊張をごまかしながら、答えを数秒待ち、

学生時代の甘酸っぱい思いでを思い出していた。

モテナイ男子には、ご飯を誘うことでさえ、一段決心が必要なのである。


「はい。いいです。」


ベトナム人の彼女は丁寧にそう答え、

緊張で凝り固まった肩の荷が降りた私は、


「じゃあ行こうか」


と、彼女を連れて、初のご飯デート(デートなのか?笑)にいくことになる。


行き先は駅のつけ麺やさんで、彼女はつけ麺を見るやいなや、


「食べたことがないけれど」


そう言って恐る恐るつけ麺を口にしていた。

初めて食べるつけ麺に困惑しつつ、ベトナム人の彼女は食べ終わったあと、


「すごく、おいしいです」


私が見たなかで、世界一美しいと思われる笑顔で、そう言った。


他愛のない話もしてくれ、

日本になぜ来たのか、家族は何人いるのか、好きな食べ物はなにか、

彼女に近づけた気がした私は、たった1時間ほどの短い時間が、嬉しさのあまり、永久の時間であるかのような時間感覚を忘れ、

スマホの時計を確認し、終電の時間になんとか体を間に合わせた。



くる日もくる日も、ベトナム人の彼女の存在が、私のなかで大きくなっていき、

どうやってご飯に誘おうか、どうやったら好きになってもらえるかなんて、

店長である私は、仕事を忘れてそればかり考えていた。


ある日の仕事後、

お店に備え付けのカラオケがある広い部屋で、なんとか彼女を誘い、

賄い(従業員用のごはん)を食べていた時のこと、密室であるがゆえに思わずこんなことを聞いてしまった。


「~さんは結婚とか考えてる?綺麗だから、相手もいるでしょう」


探っている、私は彼女の

彼氏の存在を、しっかりと確認し始めた。

彼氏がいるとならば、諦めないと、

好きになり始めた時から、決めていたことであり、明らかな美しい容姿をした彼女に、

彼氏がいないだなんて、正直思わなかった。


彼女はやや照れ臭そうに、数秒間があった後、私が想像していた答えとは、少しズレた言葉が帰って来た。


「結婚したくないから、彼氏はいらない。ずっと。」


遠回しに


「あなたには興味ありません」


そんな風にも捉えられる返答に、私は困惑を隠しきれず、勿体ないとか、いつかは好きな人ができるとか、常套句をたくさんならべてその場を乗りきった。

そのときの私は、きっと私には興味が無いんだと察していて、自分に諦めるように言い聞かせたことを、今でも思い出す。



4、告白


矢のように日はめぐり、

11月、12月と彼女と働らき、彼女と会える短い時間を噛み締めつつ、

初のデートのお誘いをすることになる。


我ながら卑怯な誘いかたとは思ったが、

1月1日、日本のお正月を初めて体験してもらうために、日本のことを知ってもらう為と適当な口実で、彼女を誘うことになる。


初めてのご飯の時なんか、比じゃないくらいに緊張して、言わなければ良かったとも思った。


私の誘いに対し、ベトナム人の彼女は少し間をあけてから、ゆっくりと口を開き、その大きな目を伏し目がちに、


「夕方からなら、行けると思う」


と返事をしてくれた。

私は子犬が飼い主に尻尾をふるが如く、全身で喜びを強調し(ジャンプとかはしてないです笑)ありがとうと大きく頭を下げた。


仕事と恋を両立することは難しい。

あのときの私の頭は、ベトナム人の彼女のことで頭がいっぱいだった。



約束の日、日本人であれば誰もが知っているお正月である。

店外で待ち合わせるのは初めてで、彼女よりも15分ほど早く駅に着いた私は、

いつ来るか、始めになんて声をかけようかなんて、

デートのシュミレーションを10回ほど考えながら、ベトナム人の彼女を待つことになった。


時間通りに現れた彼女は、いつも通りの笑顔で、私が座る駅のベンチまで来てくれた。


「おはよう。寒いのにありがとうね。」


外は極寒である。

人より2枚ほど、体脂肪の服を多く纏った私でさえ、寒さに怯えているのに、キャシャなベトナム人彼女は、それ以上に寒いであろう。

彼女がはく白い息が、寒さをものがたってた。


この日は神社にいくと決めていた。

有名な神社で人混みが多く、屋台もたくさん出揃っているような神社である。

彼女はこれまた始めて見た日本の風習に、戸惑いながらも、目を輝かせ、


「ここでは何をするか?」


片言に話す彼女に私は


「神様に、お願い事をするんだよ」


と、神様という言葉も知らないベトナム人の彼女に、色々なことを説明しつつ、

神社の前までゆっくりと歩いていった。


彼女が何をお願いしたかは教えてくれなかった。


私はもちろん彼女との幸せを願っていたが。

私が教えてほしいと催促をすると、

彼女は池の鯉を物珍しそうな顔で眺めつつ、振り返った表情は太陽のような笑顔で、


「ヒミツ」


と口を尖らせた。


私はふざけながらも、心は真剣に、

どうにか教えてくれないかと問いかけたが、一向に教えてはくれなかった。



駅に向かうまえに、露店で買った牛串を食べつつ、彼女はとても犬が好きなことを教えてくれた。

犬を見る彼女は本当に嬉しそうで、

人間はこんな顔ができるんだと、

29歳にして始めて知った、きれいな笑顔だった。


帰りの駅のホーム、彼女を見送ろうと思った私だが、何とも言いがたい感情が頭を駆け巡り、


一回目の告白をすることになる。



5、告白2

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ