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先のノンフィクション、高台から空を眺めながら、からの二年間。
色々バタバタ動いた現実と、動いたことで知ったことを連ねます。
※この作品はたぶんノンフィクションです。
「こんな恵まれた環境にいて何もできなかったお前が、外でなんて暮らせるわけがないだろう?」
ある日、この家を出たいと打ち明けた私に、父は苛立ちながらこう返しました。
「確かにそうかもしれない。私は今、何もできてない。だけどこのままじゃ、生きたまま死んでしまうよ」
初夏の日。
何度となくそれまで転居を申し出ていた私は、これが最期とばかりに、父の瞳を見据えました。
「引っ越し先も仮押えしてある。手続きは頭に叩き込んだ。ここでの作業もちゃんとする」
「……なら、毎朝誰よりも早く来て開門も担当するんだな。それくらいの覚悟がないなら、止めたらいい」
「毎朝……」
「休みなんてないさ、今までと同じだ」
「……解った。そうする。だから、ここを出ます」
実家はいわゆる自営業で、開門は6時前。
引っ越し先としていた場所からは2駅の距離でしたが、ほぼ始発しか選択肢がありませんでした。
何もしていない、と父が言っていたのも正論で、この頃は体調の悪化で仕事中に倒れたり休んだりが増えていたのです。
身体中が悲鳴を上げていて、かといって自室から階下に降りれば仕事場。
休みという休みがとれない中の、苦肉之策でした。
距離を置き通えば、少しは身体も休まるかもしれない。
少しは、心もらくになるかもしれない。
結婚して家を出た妹たちに続く形で、私は長く住んだ実家を後にすることになりました。
ちょうど昔の同級生の友人とシェアして住む計画も持ち上がっており、今を逃したら難しいだろう、という懸念があったのも事実です。