第九十二話 叙勲と銀
そして叙勲式当日になった。
他のS級の人たちが宿に来たのは前日というパターンが多かったから、まだ誰がどの人か完全に把握しきれていない。
ギリギリで到着したからS級って忙しいのかなと思ったけれどそうではなさそうだ。
単純に距離が遠いところにいて移動に時間がかかるらしい。そうアイリスさんが言っていた。
また王都に拠点を建ててるS級も少なくないので人に会わないのもそれが原因っぽいな。
王宮に向かっている途中なのだが、一緒に話しながら行ってくれてる人はソイロさんという方で、今のところ一番S級になって日が浅いそうだ。
前に叙勲式が開かれたのが5年前ということなので、もう5年もS級をやってるわけだけどね。
ほら、ベリアさんとか数十年っていうし……。
ソイロさんが言うには叙勲式には国王とS級冒険者、国家所属の団の団長とかが出席するらしい。
ちなみに公爵とかの上流貴族とかは参加しないらしい。
団長ってことは両親も参加するってことか。ていうか俺がS級に上がることを知っる前提でアタップのとき話していたんじゃないか。
まあいいや。
王宮の中に入ると王家の使用人が案内してくれる。どうやらここで既にS級である人たちとは別行動になるらしい。
そのまま着付けをするためラナとも別れ、質のいい服を着せられた。
ここでスーツとか堅苦しくしないのは冒険者が相手だからだろう。
ほら、アイリスさんとか意地でも気なさそうだしS級候補に暴れられたりしたら国がやばいからね。
着替えが終わり部屋を出たところでちょうどラナと鉢合わせた。
ラナの方は軽めのドレスに少しの化粧がされている。
もともとの素体がいいが、それがさらに引き立っていてとてもきれいだ。
ラナは一周くるりと回ってみせた。
「ロイさん、どうですか?」
「うん、とっても似合ってるよ」
「えへへ、ありがとうございます!」
はにかむラナの姿がとても可愛らしかった。
会場となる謁見の間に誘導されて中に入ると、中央のスペースには豪華な食事が並んでいた。
周りにはオーラを放っているような面々が集まっていた。そこには学園長の姿も見受けられた。
そして一番驚いたのはテーブルから少し離れたところで飲み物を飲んでいる人のうちの一人にユーリさんがいたことだった。
ユーリさんはこちらに気づくと歩み寄ってきてくれた。
「ユ、ユーリさん、なんで王都にいるんですか……。アタップの街から竜で行ってもなかなかの時間がかかるっていうのに」
「あはは、ロイナスくんとかを連れてはいけなかったんだけど一人なら間に合ったからね」
「一体どんな手段で、スキルは使ってないんですよね?」
「まあ持ってないからね、普通に走ったよ。魔力と霊力を使えばなんとかね」
「いや、それはおかしいでしょ……」
心の声がつぶやきとして漏れてしまった。まず普通に考えて竜と同等のスピードって。まあS級だからおかしくはない……のかな?
「それより二人以外のS級になる子とはもう話した? あそこにいる子だけど」
ユーリさんが指差す方向を見ると銀髪の綺麗な髪の毛を一つに束ねた人がいた。後ろ姿で顔はいま判別できないが、女性であることは確かだ。
その人はなんと俺の両親と話してる。
そういえば両親の働く姿を見たことがなかったので、こういう社交的な立場で見るのは新鮮だなと思いながらも、自分と同期の女性は取り込み中だから後で話しに行こうと決めた。
「いま話しているっぽいんで後で空いたら行きます」
「そうだねそれがいい。じゃあ彼を紹介しようか、おーいヨウラク」
ユーリさんが呼びかけるとヨウラクという名前に反応した男がこちらに歩いてきた。
「どうしたユーリ」
「いや、ちょっと自己紹介をね。彼らが今日からS級になる子たちだからさ」
「なるほどな。俺はヨウラク=ワン一応二つ名を言うと【仁王】だ」
【仁王】って……序列一位の人……この人が……。
外見は長身で引き締まった肉体をしているユーリさんと同じ黒髪だが、目は青く整った顔立ちをしている。
一見気を抜いているようなのに、中にすごい量のエネルギーを溜め込んでいるように感じる。
「ロイナス=アルメリアです」
「ラナです」
「おう、よろしく」
ひとまずは優しそうな人で良かった。
すると、玉座の方から音が聞こえた。
一瞬にして静かになり、周りの皆が傅いた。ラナも周りを見て同じ動きをした。この傅くことが王に対しての礼である。
「面を上げよ。なんだそんな固くならなくてもいいぞ。今日は面倒くさい大臣とかがいないからな」
そう発せられた国王の言葉に俺は違和感を感じた。
なぜなら国王はもっと堅苦しい言葉を使っていたからだ。思っていたではなく断定である。
昔話を聞いたときにもっと難しい口調を使っていたからそういうイメージがあるのだが。
尤も噂では今代の国王は国民に親身になってくれると専ら好評だから実はこっちが素の喋り方なのかもしれない。面倒くさい大臣とも言っていたし、普段はそう窘められているのだろうな。
「では新たにS級になる三人は前に出てきてくれ」
俺とラナ、そして銀髪の女性が前にでた。それを取り囲むようにしてS級の面々などがいる。銀髪の女性は横顔だけ見えたがとても美しい女性だった。
「では只今よりロイナス=アルメリア、ラナ、そして――ネネの三名をS級へと昇格する!」
しんとした空間の中でそう告げられた。
周りからの拍手が増えていくその中で、ただ一人俺は頭の中で先程の国王の言葉を反芻していた。
――ネネだと?
再び銀髪の女性の方を見た。
すると目を合わせてきた彼女は俺の姿を見て微笑んだのだった。
お読みいただきありがとうございます。




