第四話 実戦と敗北
本日2話目
この日をどれだけ待ち望んだことか。アルメリアに負けてからというものの、俺はさらに鍛錬を積んで強くなった。
このラルフド=シャコバの実力を見せつける。
今年の応募者は15名。冒険者はA級2人、B級3人、そしてC級が10人だった。G級から始まって、C級で一流と呼ばれる冒険者の中では相当集まったのではないか。
開会式で俺はB級と闘うことになった。
アルメリアの相手がA級だったのは総合での成績での席次でしか判断しない教師にそう思われてるからで仕方ない。今日で認識を改めさせる。
頬をたたいて気を引き締める。
よし行こう。
「第一試合Aコート。ラルフド=シャコバ対B級冒険者、グリシン=イースタン! 両者、位置について下さい」
「グリシン=イースタンだ。よろしく。今日は意義のある試合にしよう」
どうやら俺の相手はまだ卒業して3年らしい。
相手がどんな攻撃を仕掛けてくるかわからない。いつでも準備はできている。
「試合終了は降参、または私の判断である。終了後、怪我人は医務室へ直行すること。それでは」
「始め!」
まずはいきなり決めに行かずに敵の出方を探っていく。
単純な力比べであればで持っている剣を本気で振るえば相手の剣をはじけるだろう。しかしそれでは俺には少し隙が生まれてしまうためこちらが不利となる。どうしようか。
「そっちがこないならこっちから行かせてもらうね! 『ファイアーボール』」
向こうが魔法を放ってきた。
それを落ち着いてかわすと、相手が自分の目の前に来ていた。そのまま剣を下ろしてくる
「ぐっ、危ねぇ」
「ほう、これをみきれるとはね」
間一髪だった。気づくのがあと一歩遅かったら一瞬で試合は決していただろう。どうやらファイアーボールは布石で視界をふさぐためのものだったらしい。
相手は火魔法のスキルを持っていること。そしてファイアーボールに追従できるような速さがあることが分かる。
力任せに押しのけて距離をとる。
同じことをやられては駄目だな。そう思い自分から相手の懐に潜る。そして袈裟斬り。
しかしこれは相手の剣に阻まれて届かない。
すぐにバックステップを踏み、逆袈裟切りをしたが、受け流されてしまう。
ここで体が流れるのをぐっと我慢して、一旦剣を引いて、瞬間突きを放った。
相手の判断が遅れたのか服にかすりはしたが、寸でのところで回避された。
逆に回避の流れで水平切りを相手がしてきたので、大きく後ろへ回避する。
ここで、使おう。
「俺の番だ」
アルメリア戦ではあえて使わなかった技
「古代剣術、壱の型!」
アルメリアとの戦いでは純粋な力比べをしたいと思って使わなかった自分の固有スキルの名を叫ぶ。
刹那、体から重さが抜けていく。
腰を低くし、剣を水平に構えた。そして地面を強く蹴る。
一瞬にして先ほど開けた距離が縮まり、剣と体がグリシンの体を通り抜けた。
「速いっ!」
体を回転させて再び構えながら姿を確認するとグリシンの左腕からは血が出ていた。
おそらくこの攻撃に反応したのだろう。初見で対応されたのは驚きだったが、それでも左手を犠牲にできたことは僥倖だ。
「うーん、いいね。さて、まだまだ行くよ」
「いいのか? 左腕がもう使えないぜ?」
「大丈夫。それに君のあの動きは次には対応できそうだ」
なんだと? 1回で見切れるものなのか?
「それにしてもうらやましいよ、君が。さっきのは固有スキルだろう? 僕はね固有スキルが発現しなかったんだ。それでもここまで登って来たのは通常スキルが恵まれていたのもあるんだけどね。一番は反骨精神だよ。固有スキル所持者への嫉妬。それはいくら君が年下だからって譲歩できるようなものではないんだ」
一拍置いた。
「君は僕には勝てない」
ふざけるな。そう思い叫ぶ。
「なめやがって! 壱の型ァ!」
再び突っ込む。
しかし次の瞬間、彼は目をつぶっていた。
俺はそれが遠慮なのか恐怖なのかは分からなかったが、何かを感じ止まろうとするが、このスキルは速すぎてブレーキが利かない。
そして彼は俺の動きを剣もろとも完全に受け流し、そこから柄で俺の腹へと一撃を入れた。
「試合終了! 勝者、グリシン=イースタン!」
審判のコールは思い出されたかのようにされていた。
「ありがとう。いい経験ができた。それと、先輩として君にアドバイスをしよう。まずスキルだね。速さは確かにすごいが、攻撃が単調すぎる。これだと対応された時の機転が利かない。例えば剣筋がその間に変えられるといいと思う。そして感情に左右され過ぎだ。自分語りを少ししてしまったが、煽りにすぐに反応したね。この二つは直したほうがいいと思うな」
「こちらこそ、ありがとう……」
しかし既にスキル発動中に剣筋を動かす事は試したのだ。しかし全く動かない。まるでそれが当たり前かのようにだ。
「グリシン! 怪我をしているんだから早く医務室へ」
審判の人の声が聞こえた。
「ああ、これか。大丈夫です。自分で治せるんで」
そう言うと彼は魔法を発動させる。腕の傷が治っていく。
「すごいな……回復魔法まで持ってるのか」
「言っただろう、通常スキルは恵まれてるって。大丈夫かい? 立てる?」
「問題ない」
そういって立とうとしてる矢先に大きな声が聞こえてきた
「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」」
「おい、向こうで首席とA級が戦うってよ! 見に行こうぜ!」
アルメリアが……A級と。やはり俺はあいつに勝てないのか。
仕方ない、見に行くか。
そういって起こした体を因縁の相手がいる所へと運んで行った。