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†.2 天使とお友達?!

コメント、評価等よろしくお願いします。ちなみに天使とかのメルヘン系ではありません★

「ひーとーみーちゃーん」

誰かが私の名をやたらに伸ばして呼ぶ。誰なのかはすぐわかった。美空絵美だ。初対面の私にいきなり抱きついた変態、そして誰もが憧れる美少女だ。

「…伸ばさないで」

「今日もツンツンしてて可愛いですなぁ」

「ほっといてよ」

「うー。そのツンツン加減。たまらない〜」

私の手に触れようとする変態女を追い払う。まったく。油断も好きもありゃしない。

汗を拭う。今日の朝練は一段ときつかった。

朝から体育館をグルグルさせられた上に、一限目は数学。朝からこいつに遭遇してしまうというトリプルの攻撃だ。さすがの私もため息をつきたくなる。

「ひとみちゃんすごいんだねっ」

絵美が私にニッコリしながら話しかける。今日はクルクルの髪を二つに結んでいたのでアイドルっぽかった。普通にしてれば天使みたいなのに…。

「なにが?」

「一年生なのにレギュラーなんだねっ」

「…まあ」

「バスケしてるひとみちゃんも最高だったよ。特に汗拭くときの顔!前髪がいい具合に上がっててさあ。超かわゆい」

「あんた…覗き見してたの…?」

絵美が首をたてに振る。一瞬でも彼女に憧れを抱いた自分を呪い殺したくなった。

「でも私だけじゃなかったよ」

「えっ?」

そんな変態がふたりもいてもらっちゃ困る。

「誰?」

「うーん。なんだっけ?サッカー部の…」

「あっ…」

恐ろしいが、私はだいたい検討がついた。あの男の子だ。さわやか笑顔の青春少年。私にフラれても諦めないという根性の持ち主。彼の名前を思い出そうと頑張っていたら絵美が深刻そうな顔をして言った。

「ひとみちゃんに重要なお知らせです」

「何?」

「後ろ」

「はい?」

「後ろからつけてきているサッカー少年がおります」私は勢いよく振り向く。よく見渡すと下駄箱の影に隠れたサッカーシューズが見えた。

「ほら。出てきなよ。ひとみちゃんと話せるチャンスだよー」

「え。本当ですか?」

ちょっと高めの声。やっぱりあの子だ。

また顔を赤らめさせて現れたサッカー少年。名前はいまだに思い出せない。

「あっ。この人だ。ひとみちゃんのこと私といっしょに覗き見してた人」

明るげに淡々と告げる。


カチン。私の何かが切れた。

「二人とも。二度としないで」

自分では最高に怖い顔をしたつもり。だったのだが。「怒ってるひとみちゃんもかわいいっ」

二人は同時にそんなことを言い出した。サッカー少年は少し小さめに呟くようにいったのに対し絵美は堂々とあの笑顔でものをもうした。ついに私はため息をついてしまう。



席につく。私はかっこよく言うと一匹狼、最悪な言い方をすると孤独であった。友達…?そんなものいらない。そう決めつけていたからだ。自分で言うのもなんだが、私は何でもできる。運動、勉強…その他の家庭的なことまで器用にできてしまうのだ。 そのせいなのか、つり上がった目のせいなのか、それとも性格のせいなのか。いまいち分からないけど私の周りに友達はいなかった。あくまで過去形。今はどうか?みなさんだいたい想像はついているだろう。絵美がいる。

「ひとみちゃん!プリント写さしてっ」

「またやってこなかったの…」

「てへっ」

「…。自分でやりなさい。テストのとき困るよ?」

「えー…。そんなあ」

絵美は残念そうに肩をさげた。私は周りに気を配る。クラスの視線が痛い。特に私を嫌ってる女子が目を光らせ何か言っている。私だけが嫌われるならかまわないのだが絵美はまきこみたくなかった。こんな綺麗な子(変態だけど…)を汚い手で汚してもらいたくないのだ。

「ごめん。勉強に集中したいからどっかいって」

きつい言い方かもしれない。でも絵美まで犠牲になる理由はどこにもないから。分かって、もう近寄っちゃダメだ。

そんな風に深刻な顔をした時だった。絵美が私の耳元で呟く。

「私はひとみちゃんのこと好きだよ」

ニコッと笑って言った絵美がとても不思議だった。このタイミングでささやいた絵美はまるで私の考えを全部知ってるようだったからだ。透き通った彼女の目、声が私の心を見透かしているようだった。

「だから、勉強教えてっ」

絵美の明るい口調。私の中のもやもやはいつの間にかなくなっていた。

「しょうがないな。昼休みなら暇だし。そのかわり絶対出来るようになるまで逃がさないから」

彼女の顔がみるみる赤みを増す。

「一生離れないなんてっ。ひとみちゃんっ照れちゃうじゃんっ。もう」

「言ってない」

「またまた〜」

「教えないよ?」

「ひゃぁっ。ごめんなさい。お願いします」

「ハハっ」

真顔で必死にお願いしてる絵美が可愛いくて、つい笑ってしまった。いったい何年ぶりの笑顔だろう。周りの人たちもかなりびっくりしたろうが、誰よりも自分が自分に驚いていた。

「ひっ…ひとみちゃんが…ひとみちゃんが…笑った…」

絵美を含めたみんなが私の方を見つめた。彼女の声に反応したサッカー少年も飛んできた。

「わっ。笑ったっていいだろう?」

顔が熱い。恥ずかしくて全身から力が抜けていく。

「ひとみちゃんっ。かわゆいー!!」

絵美が抱きついてる。抵抗する力はない。

友達?それがなにものなのか。

まだ私にはいまいち理解できない。

どうみても優しそうにみえない私のことをどうみても優しそうに見える絵美が心でどう思っているかは分からない。けれど…なぜかは分からないけれど…さっきの絵美の言葉に妙に安心を覚えたのだ。抱きつかれながらボンヤリ考えた友達の二文字。絵美の抱きつく力が強すぎて本日二回目のため息をついてしまう。窓から見えた小さな空はいつもより雲が少なく見えた。

最後まで読んで頂きありがとうございました†

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