表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンデッド─undead─ 二部  作者: 秋暁秋季
第一体 黄昏の集い
9/89

6

「完了?」

 ──はい。

 烏は氷室の側まで飛び去ると、私と同じ様に術を掛けた。氷室もいきなりの事で驚いたらしく、目を回している。

 次に塊を見て、くるくると首を回す。塊は例外的な存在の為、術を掛けるべきか悩んでいるのだろう。

「あっ、俺は平気ー。所長と閏日さん見てあげてー」

 ──それでは完了ですね。

「あの、所長さんと閏日さんには……」

 私が聞きたかった問いを氷室が代弁してくれた。するとまた烏は右翼を広げ、所長と閏日さんをそれぞれ指し示した。

 ──お二人は不死の薬を飲まれております故。

 不死の薬……? あぁ“老化が進む”ということは寿命にも直結しているのか。

 でも此処でふと考える。所長はインペラトルの事を嫌っているし、長居する事も無さそうだ。幾ら呼ばれたからと言って、術を掛けるものではないんじゃないか……?

「質問が有りそうだね。紅葉」

「術を掛ける必要あります?」

「あるよ。突然時の流れを速めたら、体への負荷が大きいからね」

 微笑を浮かべると、所長は長い脚を組む。事務椅子を回転させ、腹を此方に向けると説明を開始する。

「不死の薬はね、時の流れを受けなくなる。つまり老化を防ぐ効果がある。でも薬に頼ってしか永久の命は得られないし、防ぐのは時間だけ。外傷による致命的な攻撃を受けたら死ぬよ。幾ら“不死”でもね──」

 そう自嘲気味に嗤うと、他の指先をやんわりと曲げて人差し指で私を指す。“顔を”と言うよりは心臓を狙うような動作だった。

「そして薬に頼ってしまうが為に、純粋な活力を自ら生成出来ない。私が君の武器を使うと刃が脆くなってしまうんだ。まるで“硝子”のように……ね」

 『やってみるかい?』と表情が、いや、目が物語っている。それに刃向かうように頭を振り、否定した。大切な相棒を実験台のように使って欲しくはなかったから。

 それを見た所長はくるりと椅子を回転させ、烏に向き直った。

「さぁ、行こうか。狸の居場所へ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ