両親
狩場から戻り、今いるのは古ぼけた事務所内。誰も煙草を吸わないのに、何処かヤニ臭く、灰色の空気がする。所長はその上の事務机の上に何か分厚いファイルを置いた。目に愛嬌はなく、あるのは真実を語る色のみ。そして彼は鷹揚に口を開く。
「紅葉、まず最初に言っておきたい事がある」
「はい」
「まず最初に、君の他に『不知火』という人物と共に仕事をしたことは無い」
そうだろう。所長は実直だ。少なくとも約束を破るタイプではないし、切実な思いを利用してまで此方の世界に引き込む人じゃない。
だから頼み込んだのは死亡者リスト。個人情報が詰まったものをそう安安と伝えてはいけないことを、彼は重々に承知している。だが、それに匹敵する程、彼は苦悩を重ねた事だろう。
悪魔によると、私の両親は死体狩であったらしい。そして行方不明となった。長らく遺体は見つかっていない。この事から推測するに、この死亡者リストに名を連ねている可能性が高い。
所長は私を真っ直ぐに見つめると、硬いファイルをぱらりと巡った。五十音順に並べられた名簿の中から私と同じ苗字を探す。
「君のご両親の名前は?」
「母が一葉、父が露朱です」
今でも覚えている。私の名前は自分たち二人の名前からとったのだと。秋を彩る紅葉。紅のないは、ないから読まない。だから紅葉。
父の名前は祖父がルーマニア人だったから。『ロシュ』というのは、ルーマニア語で『赤』。父いわく、日本語の『赤子』から祖父はとったとのこと。
母についてはきいてない。叔母である双葉さんだったことを見るに、姉妹だからと付けられたのかも知れない。
「あったよ。二人の名前」
「そう..............ですか.......」
ではあとは死神の王と、人狼に問いただすとしよう。
今回こそ、曲がりなりにも終わらせる。そんな気持ちで書いてます。
勿論、苦悩も多かったですが、あと数話で終わります。
さようなら。また会う日まで。




