同士討ち
ヴォルの告白を受けてから数日。恐れていた自体が起こった。所長から突然呼び出しを受け、事務所に行くと、物凄く疲れ果てた顔をした彼の姿があった。事務机に膝をつき、頭を抱え、深いため息をつく姿はいつもの彼ではなかった。
「いいかい.......紅葉..............。よく、よく落ち着いて聞いて欲しい」
「はい」
「うちの従業員が亡くなった」
思わず目を見開いた。楽な仕事じゃない。命を落とすことだってなんら不思議じゃない。でも..............やっぱり所長だって苦しいんだ.......。私はパイプ椅子に腰掛けることも出来ず、呆然と立ち竦んだ。なんて声をかければいいんだろう.......。
「戦場で散って行ったのなら、この報いを必ずとると、決心も着くんだけどね.......。亡くなった理由が仲間内での殺し合いなんだ」
「言ってる意味が.......すみません。混み込めません」
所長は虚ろな目を此方に向けた。今まで見たことも無い双眸だった。私達を取り纏め、如何なる時でも冷静な判断を下す彼はここにはいない。
所長がこんな状態なのだ。私が..............私がしっかりしなくては.......。
思わず呼吸が荒くなる。もしかしたら、明日には氷室や閏日さんと殺し合うかもしれない。そしたら硝吸鎌は躊躇いなく殺すだろう。そしたら..............そしたら。
立って居られなくなって、定位置のパイプ椅子に腰掛けた。心臓が鳴り止まない。ずっと高い進度で鳴りを進めている。過呼吸が酷くなり、意識が遠のきかけた時、黒い影が私を覆った。硝吸鎌だった。
「あまり虐めるな」
彼は地に着くほどの長い髪で私の体を覆うと、そのまますっぽりと抱き込んだ。黒猫が心配するように体を擦り付けて、手の甲で背を摩る。黒く艶やかな絹糸しか見えないが、声から分かる。凄く.......怒っている。
「洗脳だろう」
「あぁ。悪魔共がばら蒔いた洗脳ウイルスだ」
暖簾のような髪から顔を覗くと、呆れたような、それでいて軽蔑したような顔をして、所長を見ていた。そこにいつもの不敵な笑みはない。あまりにも冷たかった。
「狩るものが減れば自ずと害虫も増える。そうして死体が増えたのだろう?」
「あぁ」
所長は天を仰いだ。硝吸鎌と違って、彼の顔を見ようともしない。
「意思の弱い人間が流された。そうやって以前も.......」
そう、言いかけて硝吸鎌は口を噤んだ。それから誤魔化すように、私の顔を見た。双眸には深い悲しみがあった。所長とは違う目だ。優しくしてきた相手に裏切られたような、そんな.......。
見ていられなくなって頬を撫でる。大丈夫だと安心させるように。
約束は守るよ。死んだ後、私は絶対に貴方のものだ。裏切るなんて、しちゃいけない。
過去のプロット引き出すとこんな感じ。
若気の至りってやつです。プロットの穴を埋めるために事象が多い。というのが今の感想です。
一つの事象を深堀するスタイルとはまた異なりました。




