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分かっている。圧倒的なまでの道理。それでも私は自分の幸せを優先した。天涯孤独の恐怖から、自身の兄を強制的に延命させた。
思わず唇を噛む。きっとヴォルのように考えられたら良かったのだ。でも、出来なかった。出来なかったから塊は私と共にいる。エゴを優先して、無理な延命を行わせている。
ヴォルは私の表情をしばらくずっと凝視した後、群青の体を抱きかかえ、教室の床に降ろした。
「群青はもう大丈夫です。洗脳元となったゲームを削除しましたから」
悲しさの中に割り切った表情を浮かべながら、彼は笑った。もう過ぎた話だ。例え血の繋がりのない赤の他人と化してしまっても、ヴォルは妹と認識している。見守っている。だからもういいのだ。
彼は群青の鞄を指さした。それから精悍な顔をして、一つの事実を話す。
「死体狩り、死神から得た情報によりますと、援軍化した者は皆すべからく、このゲームを行っていたという事です」
それから真っ直ぐに此方を見つめ返し、また口を開く。
「試しにこのゲームを削除した後は、洗脳を解かれた事を証明済みです」
それは群青の件で身をもって経験した。実際、削除した後、群青は気を失ったように、動かなくなった。ヴォルもインペラトルの指示で動いているらしい。
「良かった。最近流行りのゲームってあったから、危うくダウンロードするところだった」
「それは良かった。貴方様か敵に回ると本当に手が負えない」
苦笑いを浮かべ、ヴォルは立ち上がった。もう、この場を去ってしまうらしい。
「問題はこの洗脳された者達が、暴動を起こさないかと言うことです」
「そうだね。でも多分.......」
起こってしまうと思う。一目に着きやすい。今だって彼が来てくれてようやく自体を抑え込めた。だからきっと時間の問題。早く対処しなくてはならないのに、自体が大きすぎる。
深く深呼吸する。この問題は私ひとりで抱え込んでいる訳じゃない。だから大丈夫。
「どうか、これからも群青と仲良く」
そう言ってヴォルは窓枠を飛び越えた。黒い塊はみえなくなっていた。
「ん.......? 紅葉?」
「はよ。群青」
ヴォルが居なくなって数分後に群青はパチリと目を開けた。自体を上手く呑み込めていないのか、何度か目を擦り、首を傾げる。
雰囲気がいつもの群青に戻っている。良かった。もう襲っては来なさそうだ。
「群青、具合悪くない?」
「ん、大丈夫。最初クソみたいな夢だったけど、後は優しい夢だったな」
一度不機嫌そうな顔をしてから、彼女はすっと目を離す。頬が僅かに綻んでいる所をみると、幸せなのだろう。
「なんか、優しい誰かと一緒に寄り添われている夢」
「そっか」
群青、それきっと離れ離れになった兄のことだよ。
曲がりなりにも約束を守れてることに驚きです.......。
全て読者様のおかげ、ありがとうございます。
※あとは継続のみですね。(いつまで続くんだろ( ˙-˙ ))




