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「援軍はね、悪魔と契約した人間の事だよ。基本的に行う事は歩兵と変わらない。でもね、僕等が援軍を相手にすると、その人自身を殺さなきゃいけないから、別の部署が働いているの」
どうやらまた、所長の秘密主義が始動したようだった。知らせなくとも文句は言わないが、隠し事が多すぎやしないか?
悪魔に階級があることや、援軍専門の部署があるなんて初めて聞いたぞ。
頭を抱える私に対し、冥鬼は慌てたように手を振る。
「あう……ごめんなさい……」
「其れで、この刺青なんだけど……」
冥鬼は黒林檎の刺青を指さしながら、また手を振りながら説明を始めようとする。だが硝級鎌に冷たい双眸で見下ろされ、竦み上がってしまった。
「うぅ……」
「これは刻印。悪魔と契約した人間、つまり援軍に現れる刺青だ」
へぇ……。つまりこの生徒は悪魔と契約し、その僕になってしまった為に、このような痣が出ているのか……。
妙に重たい空気の中、硝級鎌は心の底から疑問を交えた声を出す。
「何故、汝が悩む? 親族はおろか、見ず知らずの者なのだろう? そのような者に逐一気を燃やしていたら、身が持たんぞ?」
べったりと私の体に腕を回し、密着すると、頬を擦り寄せてくる。サラサラの長髪が頬に、指に当たりくすぐったい。
硝級鎌が言った事は一理あるかも知れない。けれど、やはり同じ人間として、辛いと思ってしまうのは、いけない事なのだろうか……?
「汝は……優しすぎる。それに救われたのは私だ。だがね、目に入る全てを抱え込んではいけないよ」
冷たい瞳。嫉妬なんて暑苦しいものではなく、冷え切ったものだ。其れは貴方が過去に、多くのものを抱え込んで傷付いてしまったからなのだろうか……。
そろり、そろりと頬を撫で、安心させる。
「大丈夫だよ」
「……どうだか……」
信頼してない口調。幼子が拗ねた口を利いたような感じ。全く、私よりも年上だろう?
硝級鎌は私達から距離を置くと、足下に魔方陣を出現させる。下から現れた結界は紫の光を放ち、上昇気流を発生させた。舞い上がる黒髪、乱反射する裾。
光が収まると、硝級鎌は止まった世界を歩き出した。全てが石と化した世界で、ある一人の男子生徒の頭部を鷲掴みする。
「貴様等、構えておいた方が身の為だぞ?」




