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「塊さっ──!!」
「──? 全く痛いよー?」
「塊!!」
ピクリとも動かなかった生徒の一人が、塊の首を締め上げていた。細い蝋のような指先が喉に食い込んで、めり込んでゆく。
それでも塊は冷静だった。赤子の手を捻るかの如く、腕を掴むと、ギリギリ、ギリギリ、ギリギリと猛烈な力で引き剝がした。
それからあいての胸に向かって蹴り技を噛まし、遠くに突き飛ばす。
「さぁてと、もう一度お仕ご……」
白時の切っ先を相手に向け、心臓を一突きしようと掲げる。塊の腕が振り下ろされ、相手の胸元に当たる寸前、私は体当たりをしてそれを阻止した。
何かがおかしい。目は虚ろだし、覇気を感じない。そして最も気になったのは、首に浮かぶ刺青だった。
跪いて、そっと顔を近付けると、とんとんっと肩を叩かれる。振り向いた途端に頬に突き刺さる人差し指……。
「全くー。タックルなんて酷いなー」
「様子がおかしかったから、強制的に止めた。あんたほったらかしにすると、すぐ殺そうとするのだから」
塊はキョトンとした表情で、じっと此方を見据えると、何かを思案する表情で、溜息をついた。いいや。放っておこう。
私は失神した体を観察する。閉ざされた目、ぐったりと伸びた手足、其れを除いても不可解なのは、やはり首元の刺青だろうか。
「……援軍」
「冥鬼?」
氷室の後ろに隠れていた冥鬼が、とことこと此方に寄って来て、真剣な顔で呟いた。其れから私の腕を掴むと、その表情のまま、問いかける。
「紅葉のお姉ちゃん。悪魔の階級について何処まで知ってる?」
「まだ何も知らない。悪魔と死神が争っている事しか……」
そう言うと冥鬼は少し俯いて、何かを考え始めた。何から話し始めようか、考えているようだった。
僅かな時間が経過した後、冥鬼は口を開く。
「悪魔にはね、それぞれ階級が決まってるの。位が高い順に“爵位持ち”、“騎士団”、歩兵、そして援軍」
この中で、冥鬼が言った援軍は最も位が低い事になる。つまり雑魚中の雑魚、という事になるだろうか?




