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冥鬼が半泣き状態になりつつあったので、渋々……という風に白時は頬を膨らませる。
御前等姉弟か……。という思考は置いておこう。もともと、姉弟のようなものだし。
薄ぼんやりと二人のやりとりを見ていると、また後ろから腰に手を回された。首を伸ばして私の肩に顎を乗せると、ぴったりと密着しだした。どうやらほったらかしにされたようで不機嫌らしい。
「よーし、じゃあ氷室ちゃんとこ行こー」
塊と白時が意気投合したように、明後日の方向を指さしてドヤ顔している。まぁ此奴等は平常運動だ。なにも心配ない。
私は二人をそっとしておき、冥鬼の冷たい手を取り歩き出した。そして……硝級鎌が腰に回したうざったい腕は如何すれば良いだろうか?
黙って腕を剥がそうとすると、嫌にムッとした表情でそっぽを向かれた。どうやら気に入らなかったようだ。
「冥鬼とは手を繋ぐのに。唐紅は子供が好きなのだな」
「いや、どっちかってと苦手。何話して良いか分からない」
目すら合わせてくれない。ただ適当にぶら下げていた手に、硝級鎌の指が絡み付く。見た目幼子に嫉妬するな。大人気ない。
それでも、幾らか機嫌は浮上したようだ。雰囲気が柔らかくなった。
私は張り切る二人を放置して、歩みを進める。その時だった。
硝級鎌の歩みが止まり、左手に巨大な十字架が担がれている。目は流氷のように冷たく、真っ直ぐに前を見据えて……。
「硝級鎌?」
「雑魚だなぁ……」
恐る恐る後ろを振り返ると、十時の先に縫いぐるみのようなものが突き刺さっていた。
ファンシーなピエロを模した顔とは不釣り合いな、鋭い歯が羅列されている。その開かれた口を貫通するように、柄が突き刺さっている。
「……っ」
真っ青になる私を放置して、塊がミズからの聖遺物を持つ。時計の針を二つ重ね合わせたようなもの。白時も何時の間にやら消えている。
授業を受けていたのに、空気が一変した。全くもって穏やかで無い。独り青白くなる私を差し置いて、二人は戦闘を開始する
「はいはーい、塊君お仕事頑張りますよー。白時、十二時半」
冷ややかな微笑を浮かべ、刻刺を掲げると、ギリっギリっと針が一直線に並ぶ。そしてそのまま人縫いぐるみの首を切り落としていた。
空中に落下するその時に、冥鬼の瞳が怪しく輝く。その途端、狂気めいた縫いぐるは跡形もなく消えてしまっていた。
「ごめんなさい……。何も出来なくて」




