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「はい。出来たー」
丸っこい、掌サイズのパンに食らい付いているとき、塊は満足げに言った。開いている方の手で毛先を弄る。うなじの辺りで跳ね回っている毛先をが妙にくすぐったい。
私は塊の作った無駄に量の多い馳走を、やはり無駄に多く残し、フォークを置いた。
「うんー? もうお終い? 食べなきゃ元気で無いし、エネルギーの生成が……」
「あんたには言われたくない」
「もうっ。良いですよー。全部胃袋に収めますから」
ぶっきらぼうに、かつ冷たい視線のままで吐き捨てると、塊は拗ねたように束ねられた髪を揺らした。餓鬼のするような小さな報復なのだろう。
私はいつの間にやら足下に置いてあった鞄に目を走らせ、持ち手を掴む。少し食事に間を取り過ぎた。
「じゃあ、行ってきます」
「はーい」
私が立ち上がると、塊も付いてくるようで、後を追われる。私が出掛ける時塊が見送りに出すのは、最早日課である。




