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アンデッド─undead─ 二部  作者: 秋暁秋季
第一体 黄昏の集い
6/89

3

「ふふふっ。お仕事の御褒美に、罅荊ちゃんに引き摺って貰っちゃった☆ 皮膚のすれる感じが堪らなく気持ちいい……」

 閏日さんは地を這うようにしながら此方に近付いて来る。さながら芋虫のようで悪寒がした。

 彼女から離れると、ドアから見て向かい側にあるロッカーの方まで移動する。近くに常に開きっぱなしのパイプ椅子があるので、其処に腰を下ろす。此処が事務所内での私の定位置だ。

 片膝を上げて顎を乗せ、椅子に踏ん反り返る体制を阻止すると、私は端的に告げた。

「で、呼び出されたのなら早く行きましょう。嫌いな相手ならなおのこと」

「うん? インペラトルに呼び出しが掛かったの?」

 床をモップの如く這っていた閏日さんが顔を上げる。罅荊に雑に下ろされてから髪を整えて居ないために、振り乱れた髪が顔に掛かっている。番丁皿屋敷か……。

 その問いに事情を知らない私と氷室、塊が首を傾げた。

「どなたでしょう?」

「俺も聞いた事無い」

 氷室と塊は顔を見合わせてお互いに首を傾けた。頭上に疑問符が浮いている。勿論私も知る筈がないので、後ろ座りして所長の顔を見た。

「其れは私が言うよりもこの子から聞いた方が早いと思うから、実際会うのが良いと思う。特に紅葉は呼ばれているし」

 この子って誰だよ……。というか本人の知らないところで勝手に話が一人歩きしているのだが……。

 物凄い怪訝な顔をしていると、所長は窓から手を出して上下に振る。すると一羽の烏が所長の腕に止まった。烏は毛繕いをした後、まるで御辞儀でもするように頭を下げた。

 私と氷室は目を剥いて唖然とする。近頃の烏は随分と人懐っこくなったものだ……。……まさか“この子”ってこの烏が!?

 ──お初に……とはとても言い難いですが、お初にお目に掛かります。皆様。

 脳裏に直接響く声。耳を介してではなく、直に伝わって来る。それも正に“話している”レベルで。

「喋った……」

「賢い烏さんですね!!」

「芸とか仕込んだの?」

 三者三様別の言葉を発しているが、驚いていることは共通だ。烏はその様に特段慌てた様子もなく言葉を繋げる。

 ──私はインペラトルにお使えする、“ファミュレス”と呼ばれる一端の使い魔で御座います。以後お見知り置きを。

 そう言うと翼をはためかせ、頭を下げた。何はともあれ普通の烏では無いことだけは良く分かった。というかインペラトルって何者……?

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