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「暇だったらさ、休んでて良いよ」
「やるべき事をする」
端的に応えると、シンク下から銀製のボウルを出し、中に挽肉を入れる。また別の皿を用意し、卵を割る。ふっくらと浮き上がる黄味を箸で潰し、横に激しく搔き回す。液状の白身と黄身が良く混ざり合った所で、挽肉と合わせ、捏ね上げる。
「玉葱、狐色になった?」
「はいはーい。なってますよー。少し下がっててね」
フライパンを火から放した塊は、たった今混ぜ合わせたばかりの種に、飴色の玉葱を流し込んだ。それから颯爽と置くと、私を押し退けて、代わりに捏ねる。
「……」
「ふふー」
玉葱の件をぶり返したかの如く、チェシャ猫のような笑顔を浮かべた。腹立つなぁ、本当に……。
明らかに可愛げの無い顔をして見せて、私は大人しく身を引く。その場を離れた後に塩とコショウを準備し、塊の傍を離れる。
「おっ、有難うー。じゃ、向こう言っててねー」
そう言ってキッチンから追い出された。まぁ後やる事と言ったら形を整えて蒸し焼きにする事ぐらいなので、大人しくその場を去る。
そして大人しくやる事と言ったら、決まっている。秋本理子先生のSNSを確認する事だ。黙ってスマホのスイッチをオンにし、呟きを確認。
――私は正直、お話する事よりも書く方が得意です(´-ω-`)
なんせ口下手で、噛み噛みですからねぇ(*≧Δ≦)――
スマホの中ではよく喋る秋本先生も、実は結構人見知りが激しく、人前に出るのを嫌がるタイプの人間であるらしい……。
日本人は話し下手な人が多いと聞くが、彼女もその中の一人なのだろう。そう思いながら、スクロールする。書いてあるのは最近の出来事。読んだ本の感想を実況形式で呟いている。
私も何かコメントしてみようかな……。そう思って一言。
――先生の最近のお気に入り本は何ですか?――




