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私は引き攣った口元のまま、冷めた双眸で彼の様子を見る。
「今日、何かあったっけ? スーパーの特売とか、ポイント二倍とか?」
「ううん。あ、し、た、紅葉ちゃんの参観日でしょー?」
「……」
あれ、そうだっけ……。正直覚えてない。其れに覚えていたとしても、決して此奴には言わない。絶対に言わない。
思い返すのは一年の時の授業参観。それなりに顔の良い此奴は、来るだけで女子から注目の的になる。つまり女子に囲まれて、姿が見えなくなる。挙げ句身動きが取れなくなるのがオチだった。
其れでもまぁ、その取り巻き達を利用して、馬鹿みたいに広大な学校の案内を頼んだらしいのだが、誰が案内するかの派閥になり、結局迎えに行く羽目になった。
辿り着き、声を張り上げたところで、人の体に吸収され、思うように届かない。だから接触恐怖症を何とかして抑え込み、肉の壁を押し退けながら彼の元に行ったのだ。今思い出しても悪寒がする。
あれをもう一度……なんて冗談じゃない。
「来ないでね」
「もう、いけずー。誘われなくても行くのが俺でしょ?」
それもそうだ。
私は呆れと冷徹を交えた瞳で彼を見る。自慢にならない事を得意げに語る子供を見る教師の目だ。
まぁ此奴に言っても無駄だという事は再実感出来た。もう止めよう。
「はい、じゃーご飯用意します」
そう言って颯爽とこの場を後にした。




