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恐らくは、死体狩りの事だろう。というかそれ以外に考えられない。ただ返答に困ったのは、何というか……要智さんが求めている回答とは違うと思ったからだ。
そもそも根源が違う。聞きたいことが其れではない……というような。
「死体狩りのこと、ですよね?」
「んっ? ああ」
何でも無いように応える。どうやらただの私の思い違いだったようだ。
要智さんは前髪を掻き上げると、少々困ったように眉をハの字にした。言いたい事があるなら、悩む事無くあっさり言ってくれればいいのに。……いや、其れが出来たら苦労はないか。
「特に話す事もねーなぁ……。そうだ、御前は何が聞きたい?」
「要智さんは……悪魔と戦った事って、ありますか?」
彼は地べたに胡座をかくと、腕を組んで何やら考え始めた。かなり昔の事だし、忘れてしまったのかも知れない。
沈黙、数分。其れを破り、彼は口を開く。
「あったよ。当たり前だが、死体よりかは苦労した。死体はただ本能の望むままに人を襲うだけだが」
「其れだって問題です」
抑も死体が人間の血肉を求めなかったら、死体狩りは存在していなかったかも知れないのに。代わりにエクソシストのような仕事を多く任される事になったのかも知れないが……。
変わらないか。代わりは幾らでも在るし、居る。
彼は僅かに頷くと、瞳を刃にした。その目で斬り殺されそうになる。
「だが悪魔は本能だけじゃない。知恵がある。御前は今まで低能な、野生動物を狩ってきたようなものだ。だが次に狩るのは人間だと考えていい。罠に気がつくし、逆に張られる事もある。今まで以上に危険が伴う。気を付けろよ」
要智さんは何時もの明るい雰囲気を陰に隠し、ただ至極真面目に言った。最初の『大丈夫か』はこれを思って言ったのだろうか?
私は僅かに顎を引き、頷いた。前に一度油断して、致命傷を負ったのは、私の一生の汚点である。二度と繰り返してはならない。
「そろそろお目覚めだ。またな」
彼の声が手綱となり、私を現実へと引き戻す。目蓋越しに光が入ってきて、白い光が埋め尽くす。……眩しい。
「おはよーございまーす」
「……」
私の目覚めを予期してか知らずか、部屋の扉を盛大に開け放ち入って来る。何時もにも増してテンションが高い。奥さんが出産し、其れを喜ぶ夫のようだ。
反対に私の気力は反比例していく。どんどん下がる。目覚めと同時に今日の元気が失せていく。




