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「はーい」
塊は気の抜けた返事をすると、後ろ髪をボリボリと乱雑に掻き毟る。料理の前に手を洗う事を推奨しよう。
私の白い目に気が付いたのか、塊がキョトンとした顔で此方を見てくる。頼むから衛生的に健全であれ。
「手、洗ってね……?」
「言われずとも」
と、口先で言っているが、本当はどう思っていたかは定かでない。目を離した隙に豚肉刻み兼ねない。それが塊という人物である。
まぁがさつである。気にしないし、気にも留めないのが此奴だろう。
しかし私から言われたせいか、大人しく洗剤を手にし、その場で洗おうとする……。
「荒れるよ」
「気にしません」
最高に爽やかな笑顔で切り替えされた。世の女共が惚れ惚れし、失神するような微笑だった。勿論妹である私はそんな事には万が一にもならないし、なってはならないと思っている。
私は黙って襟首を掴むと、片方の手で洗面所の位置する方角を指さした。
「その間に済ましておくから、さっさと洗って来て」
「気にしないのに」
「私が気にするの」
そうぶつくさ文句を垂れるのは、単純に勿体ないと思ったからだ。折角綺麗な肌に生まれたのだから、もっと大切にして欲しい。と言うのは勝手な私の意見である。
指図を受けた塊は、『紅葉ちゃんがそう言うならば』と適当に承諾し、その場を去って行った。
さぁ、下準備を開始しなくては。私はピーマンを真っ二つに切り、そのうちの一つを手前に寄せた。
刻むときは猫の手。指をくるりと曲げて等間隔に、リズミカルに細切りに。一つ目を終えると、残されていたもう一つに取り掛かる。
「お待たせ」
エプロン姿の塊が戻って来た。颯爽と私の横に立つと、同じように横に立つ。
「俺は何をすれば良い?」
そう笑顔で問い掛けて来るので、まだ何の手も加えられていない、一つのピーマンを押し付けた。黙って刻まれたものを指さすと、今何をするべきか分かったようだ。黙って同じ作業をし始めた。
私の真似をして数分後、塊は刻み終わったらしく、包丁片手に笑顔で此方を振り返った。
「あれ、塊って青椒肉絲作った事無かったけ?」




