1 お呼出
二部ー!! うっしゃぁ(*´∀`)(*´∀`)(*´∀`)(*´∀`)
時は夕暮れ。橙の光が窓から差し込んで辺りを濡らす頃、私はある人物に呼ばれていた。正直なところ、とても憂鬱だ。彼から呼ばれて録な事があった試しが無い。
そんな憂鬱な気分を携えたまま、数年前から勤めている事務所前まで来る事となった。錆び付いた階段は何時崩れるかも分からない無駄な恐怖があるし、建物自体も『築何年だよ……』と突っ込みたくなるほどに古めかしい。
「はぁ」
私は溜め息を着くとゆっくりと階段を登っていく。安楽死なら大歓迎なのだが、転落死は痛みを伴いそうなので勘弁だ。
なんとか頂上まで登り終え、絶対に滑らかに回らないであろうドアノブを捻る。幸い今までは何とかなっていたが、そのうち錆で取れるのではなかろうか……。
中に入ると別に誰かが煙草を吸っているとい
う訳でも無いのに、何故か脂臭い……。空気が澱んで見える。映画のセットでしか見たことが無いような探偵事務所を、そのまま作り上げたような光景が広がっている。端的に言えば古ぼけた空間が広がっている。
「こんにちは」
私が挨拶すると、真っ先に反応してくれたのはこの二人。一人は御丁寧に立ち上がって深々と頭を下げ、もう一人は古ぼけたソファにふんぞり返ったまま此方を見ている。
「あっ、先輩。こんにちは」
「紅葉ちゃん、遅ーい」
氷室と塊である。
文句も垂れず、私のことを『先輩』と呼んで慕ってくれるのが氷室。常に礼儀正しく優しいのだが、加害妄想なところがあり、常に挙動不審。でも良い子である。
その穏やかさを強調するような垂れ目と、それを隠すように掛かった前髪が特徴である……。
そして登場から文句を垂れて来たのは塊。私と行動を共にする、見掛け“だけ”は王子のような美青年。常に明るく振る舞っているが、全て見せかけである……。振りは止めて欲しいのに……。
「ほらー紅葉ちゃん。笑顔ー!!」
「はいはい」
軽く頬をマッサージしてから口角を上げる。長らく作り笑顔を行っていなかった為に、頬が凝り固まっている。少しぎこちないかも知れないが、勘弁。
「はい、良い子ー!! 流石俺の妹ー!!」
言い忘れていたが兄である。因みに塊は母親似、私は父親似の為、顔立ちはあまり似ていない。
頭を撫でようとする塊を軽く交わし、私を呼び出した張本人に目を向けた。
「所長、今日は何の用でしょう?」