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しかしインペラトルは浮かない顔をしている……何故だろう。
「時代は……繰り返えされる。失敗したら、申し訳ないな」
「いえ、大いに構いませんよ。今までも片方だけでしたし、特に変わりません」
何かを悔いるように、暗示するように、インペラトルは言った。その顔に笑顔など在る筈もなく、そっと氷室の頬に触れる。対して氷室は春の気のような穏やかな表情で頷いた。
「では、始めよう」
インペラトルの一言で、地面から紫色の光が放出される。その光は放射線状に飛び散り、直視出来ない程に輝きを増す。一度瞬きをした後には、既に収まっており、何事も無かったかのようになっていた。
「大丈夫か?」
「はい」
「では試しに、コレは見えるか?」
インペラトルは右手を差し出す。掌の上に何かを乗せているような動作だが、上には何もない。
氷室は一度眉をしかめると、左目をぎゅっと閉ざした。まるでウインクでもするように。そしてもう一度両目で確認すると、苦い顔で左右に首を振った。
「いえ……与えられたであろう、方には……何も」
「そうか……すまないな」
どうやら失敗してしまったようだ。まぁ、見えざる目を与える事自体、簡単な事では無さそうだったからなぁ。
申し訳無さそうに表情を曇らせるインペラトルに、氷室は明るく返す。
「御心配なく。今まで通りです」
「そう言って貰えると助かる」
仄かに口角を上げ、微笑むと、すっと氷室から目線を外す。そしてばっちり私と目が合う。何の用だろう。
「所で、先程悪魔の話をしたのは、これから対峙する事を考慮しての事だ。そしてその時何も見えていないならば、ハンデが大き過ぎる」
「んで、その悪魔を見えるようにさせる為に呼んだと」
塊が欠伸を噛み殺しながら、背中を背凭れに預ける。どうやら長い話に退屈し、飽きてしまったようだ。見るからに面倒臭そうで、人の気を苛立たせる。
本当に腹立つな……此奴……!! そんな気が無いならきちんと座れ。
しかしインペラトルは穏やかさを壊さず、すっと私の方を向く。
「あぁその通り。しかしね、一番の理由は紅葉にある」
「私……ですか……?」
驚いて声が震えてしまった。同時にすぅっと見開いた目に空気が辺り、乾燥を呼ぶ。




