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確かにインペラトルの言うとおり、単語からある程度どういった世界かは想像がつくし、私は質問にさえ答えてくれれば文句は無いので、口を引き結ぶ。周りの皆も意義は無いようだった。
「まず、この図に書いている世界観を、私達は一般に“世界樹”と称している」
なんだか、北欧神話のようだな……と思う。でも世界観は大きく異なるし、確か死神の存在もこう、大きなものではなかった。
インペラトルは人差し指を下に向け、此方を見る。
「此処、世界樹の第三階層は黄昏の集い(コウコンノツドイ)。死神達の根城であり、輪廻転生を執り行う、言わば……そうだなぁ……」
「あの世で良いと思います」
ヴォルのあっさりとしたツッコミに、インペラトルは笑顔で指を鳴らす。
「そうだな。そして其れを取り巻くように、“レーテー”と呼ばれる……ふむ、お前達により分かり易く伝えるならば“三途の川”がある。そしてその外側に物質界と呼ばれる世界が広がっている」
私の脳内に筒状のパスタケースが浮かぶ。その真ん中に襟巻きのようなフリスビーが巻き付き、内側から三途の川、物質界とネーミングする。
是非とも絵を描いて納得したいところだが、ヴォルの絵を見れば大体分かるので、断念する。
「まぁ黄昏の集いを中心として、派生しているのが物質界。そして物質界と一口に言っても数多くの空間、世界が混在している。マキナを知っているかい?」
その質問に皆真面目な表情になる。話しか聞いた事は無いが、吸血鬼であり、死体狩りの仕事をしていた人。そして所長、閏日さん、氷室と私の先輩に当たる人達とも縁が深い。
その考えを代表するかのように、所長が口を開く。
「前に話をしましたよ。話だけならどういった人か知っている」
「そうか。マキナも物質界に存在する世界の一つの生まれなんだ。このように、君たちの世界以外にも数多く存在する。
混乱しているかい? だがね、これが本当の世界の在り方なんだよ。君達は世界樹の一部の物質界、それのまた更に小さい世界の住人なんだ」
ここらが本題だ──。と雰囲気を一変させる。あの、氷のように冷ややかで、鋭い刃のように研ぎ澄まされたオーラ。
「はっきり言って、今話した事はどうでも良い。一番話したいのは世界樹の第五階層、魔界だ。全く、人に説明するのはどうにも難しい」
へにゃりと苦笑いを浮かべながらも、目つきは全く笑っていない。寧ろ鋭さを増している。何だろう。今にも人を殺し兼ねないような、そんな危うい……。
「魔界と言うのは、悪魔達の住む階層なんだ。悪魔は一般的な解釈同様、人をたぶらかし、困らせるのが主な仕事。其れを愉悦とするような最低な屑共だ」




