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アンデッド─undead─ 二部  作者: 秋暁秋季
第一体 黄昏の集い
28/89

1 寂しい

「やっほぃ紅葉ちゃん。心配したんだぞー?」

 遠くに二つの人影が見えるなぁ。と思ったら案の定、塊と氷室だった。そして只今絶賛腕を回され、うざったい程に頬擦りを余儀無くされている。


 ヴォルと氷室は少し困ったように頬を掻き、へにゃりと苦笑いを浮かべた。ごめん、許して欲しい。

「二人はどうして此処に?」

 頭頂に顎を乗せる塊を押し退けるようにして、氷室に目を向ける。だがしかし、離れまいと腰に回された腕が、全力で其れを阻止していた。


 話を振られた氷室は、穏やかに微笑んでゆっくりと首を傾けた。

「先輩のお迎えに」

「ごめん、心配かけて。でも迷子になるかもしれないから、こういう時は放って置いてくれて全然構わないから」

 文字通り、心配してくれたのだろう。でもそのせいで執務室に戻れなくなっては大変だ。見切ってくれて大いに構わない。

「あぁそうだ、ヴォル。紅茶が冷めてしまうでしょう? 氷室を連れて帰って良いから」

「でも、帰りはお分かりですか?」

「道なりでしょう? 大丈夫」

 気丈に深く頷けば、ヴォルは納得したように歩みを再開した。氷室は一度戸惑ったように此方を振り返りつつ、真紅のカーペット踏みしめて去って行った。


 残された私は塊を引き剥がそうと、腕を掴んで前方に突き出すも、力量の差で適わない。これが男女の差か……。あぁ違う。此奴の握力自体、チートだった…………。

 沼の底よりも深い溜息を吐くと、塊は僅かに力を緩めてくれた。

「寂しくない?」

「突然どうしたの?」


 らしくも無く、目を見開いてしまった。思わず顎に向けていた掌も、力が緩まってしまう。塊はその様子を見て、無表情にも問いかける。

「寂しくないの?」

 以前は…………寂しかった。ずっと前、両親を亡くした時なんて、絶望に打ちひしがれて、放心したものだったけれど。……そりゃ塊と一悶着有った時も、精神に色々と支障を来していたけれど……。


 でも今は大分落ち着いていると思う。この平穏が何時までも続けば良いと思ってしまうのは、私の我が儘なのだろうか。

「そっか」

 塊は静かに笑うと、漸く腕の力を緩めてくれた。彼の顔を見ると私の方は見ておらず、ずっと遠くの廊下を眺めていた。

「さぁ、戻ろうか」

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