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ヴォルの声で我に帰る。彼を見るときょとんとした顔で此方を見ていた。
「ごめんなさい。何でもない」
「そうですか。ところで、紅葉様は気に入った茶葉は御座いますか」
ヴォルは楽しそうに引き出しを開け閉めしながら、私に問いかけて来た。
茶葉……茶葉……。余り良くは知らない……。良く耳にするのはダージリンや、アールグレイだけれど、それだって違いを尋ねられたら言葉に詰まってしまう。
手を顎に当てて考えていると、ヴォルの方から語り掛けてきた。
「ダージリンの特徴と言えばやはり香り………。特にセカンドフラッシュのものは、味、香り、コク、共に最高級品で……。っとすみません」
少し気まずそうに俯く。言い過ぎたとでも思っているのだろうか。だが私は特に気にしていないし、知識が増える事が悪い事だとも思っていない。
『趣味と化している』と言っていたけど、本当に好きなんだなぁ……。
「今回は王道のダージリンにしておきますね。あっ、後ですね、出涸らしなんかはマドレーヌに混ぜると美味しく出来ます。今度試して見て下さい」
「詳しいね」
「私より詳しい方は沢山いらっしゃいますよ。さぁ、先程の事が無いように、今度は皆様の前でお入れ致しましょう」
そう言って、缶と人数分のティーカップを持ち、手招きした。




