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1 謀
「様子を見て来ますかー。此処、迷子になっちゃいそうだし」
塊はテーブルに両手を着いて立ち上がると、髪を適当に撫で上げた。常に笑顔を保っているが、今は完全に無表情。両目には闇が映っている。
紅葉が居ない今、彼はインペラトルに対して殺戮を起こし兼ねない。だがそうしない無いのは、猟奇に染まったところで、彼女の気持ちが救われるとは思えないからだ。故に様子を見に行く事にしたのだろう。
「私も行きます」
「んー? 大丈夫だよー」
きょとんとした表情で返すが、氷室の双眸には確固たる意志が感じられる。
常日頃から血生臭い世界で過ごしているからこそ、死体を狩るとき以外は平穏でいたいのだ。故に気分転換に出て行くつもりなのだろう。




